「Uchuu」で再現された現在の宇宙のダークマターの分布。図はシミュレーションの中で最大規模の銀河団を拡大したもの。
「Uchuu」で再現された現在の宇宙のダークマターの分布。図はシミュレーションの中で最大規模の銀河団を拡大したもの。 / Credit:NAOJ/世界最大規模の“模擬宇宙”を公開—宇宙の大規模構造と銀河形成の解明に向けて—,石山智明
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宇宙を誕生時からシミュレーションした「模擬宇宙」を国立天文台が公開 (2/2)

2021.09.17 Friday

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世界最大規模の模擬宇宙

2018年より運用が開始された国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイ」
2018年より運用が開始された国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイ」 / Credit:国立天文台,新天文学専用コンピュータ「アテルイII」始動!(2018)

しかし、国立天文台の持つ天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」が、この困難な計算を実現させました。

このシミュレーション研究は、千葉大学の石山智昭(いしやま ともあき)准教授をはじめ、スペイン、米国など9カ国の研究者から成る国際研究チームによって達成されました。

アテルイⅡには、4万200個ものCPUコアがあり、今回の計算ではその全てが利用されました。

そして世界最大規模となる宇宙構造形成シミュレーションに成功したのです。

この大規模なシミュレーションでは、暗黒物質を2.1兆体の粒子で表現され、それらのすべてに働く重力を計算することで、暗黒物質が作り出す宇宙の構造を詳細に描き出したのです。

こうして作り出された模擬宇宙は、そのものずばりな「Uchuu(宇宙)」と名付けられています。

この「Uchuu」は一辺が96億光年というサイズを持ち、矮小銀河から巨大な銀河団まで、質量が8桁にも及ぶ天体の進化を精密に追って作られています。

その途方も無いシミュレーションデータは、なんと全体で3ペタバイト(テラの1024倍がペタ)に及びます。

しかし、研究チームはこれを高性能な計算技術によって大幅に圧縮し、誰でも利用できる形式にしてインターネットクラウド上で公開したのです。

つまり今回の研究成果から世界最大級の仮想空間が、ネット上にリリースされたのです。

「Uchuu」のシミュレーションデータは、こちらで公開されていて、誰も無料で利用することができるそうです。

ぜひ、暗黒物質による宇宙進化の謎に迫ってみようという人は、この世界最大規模の模擬宇宙オープンワールドを体験してみてください。

とはいえ、圧縮しても「Uchuu」の全容量は100テラバイト程度あるということなので、空き容量には注意してください。

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