バジルに含まれる「フェンコール」がアミロイドベータを減少させる
スクリーニングの結果、チームは、15種類の有力な候補を特定。
その中から、SCFAに最も近い化合物を調べたところ、バジルの芳香をもたらす植物由来の天然化合物「フェンコール」が、FFAR2の活性部位に結合し、シグナル伝達を促進する能力に優れていることが分かりました。
さらに、ヒトの神経細胞の培養、線虫やアルツハイマー病のマウスモデルを対象とした実験で、フェンコールは、FFAR2シグナルを刺激することで、アミロイドベータの過剰な蓄積と神経細胞の死を有意に減少させたのです。
それから、フェンコールがアミロイドベータによる神経毒性をどう制御するか調べてみると、アルツハイマー患者の脳でよく見られる「ゾンビ細胞(=老化した神経細胞)」も減少させることが明らかになりました。
フェンコールの働きにより、ゾンビ細胞は複製を停止し、ゆっくりと死滅していったのです。
以上の結果から、フェンコールには、腸内由来の代謝物であるSCFAと同様に、アミロイドベータを減らしてアルツハイマーを予防する有益な効果があることが示されました。
研究主任のハリオム・ヤダフ(Hariom Yadav)氏は、次のように述べています。
「アルツハイマー予防のため、スパゲッティにバジルを大量に入れる前に、人を対象とした臨床試験を実施しなければなりません。
また、フェンコールの効果的な摂取方法も特定する必要があります。
バジルをそのまま食べた方が良いのか、バジルからフェンコールだけを分離して錠剤にした方が良いのか。
あるいは、鼻腔スプレーとして、フェンコールを最短距離で脳に届けた方が良いのか。
実用化には解決すべき問題がたくさん残されています」
ただ、バジルには、ビタミンEやカルシウム、ベータカロテンなど、栄養素が豊富に詰まっているので、今のうちに食べておいても損はしないでしょう。