発症原因となる「アミロイドベータの蓄積」を減らすには?
まず、アルツハイマー型認知症はいかにして起こり、患者にはどんな特徴が見られるのでしょうか。
アルツハイマーの主な病態の1つは、脳内にアミロイドベータが蓄積し、神経細胞(ニューロン)の間に付着して固まり、アミロイド斑を形成することです。
これが神経細胞の減少や死を引き起こし、脳の一部を萎縮させて、最終的に認知症状を発症させます。
そして、高齢者のアルツハイマー型認知症患者では、有益な腸内細菌が産生する代謝物である「短鎖脂肪酸(SCFA)」の減少がよく見られます。
一方で、SCFAの減少がアルツハイマー病の進行にどう関係しているかは、あまり分かっていません。
ただし、SCFAは血流を介して腸から脳に到達し、脳の神経細胞で発現しているシグナル分子の「遊離脂肪酸受容体2(FFAR2)」に結合して、活性化することが知られています。
研究チームは今回、このFFAR2の知られざる機能について詳しく調査しました。
実験で、FFAR2を阻害(=神経細胞外の環境でSCFAを「感知」し、細胞内でシグナル伝達する能力を阻害)したところ、アルツハイマーの主原因となるアミロイドベータの異常蓄積を起こすことが示されたのです。
それと同時に、SCFAが受容体のFFAR2と結合して活性化することで、アミロイドベータの蓄積と、それに伴う神経細胞死が減少することが明らかになりました。
つまり、SCFAとFFAR2の相互作用には、アルツハイマーに対する予防効果があるということです。
しかし、問題点があります。
というのも、SCFAは、血液循環によって脳に到達する前に、腸やその他の器官によってほとんど消化されてしまうのです。
アルツハイマーを予防するには、SCFAの代わりに、FFAR2と結合でき化合物を見つけなければなりません。
そこでチームは、14万4000種以上の天然化合物を対象とした大規模なバーチャルスクリーニングを行い、SCFAと同じ能力を持つ候補を探しました。