藻類との共生は脊椎動物に新たな適応能力を与える
今回の研究により、血管に注入された植物プランクトンが行う光合成で、オタマジャクシの脳の活動を維持できることが示されました。
オタマジャクシは自力での呼吸が不可能でも、外部から供給される光によって植物プランクトンが光合成を行い酸素を発生させることで、脳機能を維持できたのです。
研究を主導したシュトラカ氏は「この方法で原理的(基礎的)な実験を証明することに成功しました。それは驚くほど堅牢であり、美しいアプローチに見えた」と述べています。
研究者たちは実験の成果が脳卒中の治療や、水中や高地などでの低酸素症の予防や治療につながると考えています。
また孤立した臓器に迅速に酸素を供給するという観点からみれば、人工培養臓器(オルガノイド)や3Dプリントされた臓器 などに酸素を供給する手段としても利用可能になる可能性があります。
現在、オルガノイドや3Dプリント臓器を作成するにあたって最も大きな壁になっているのは、酸素を供給する適切な手段がないことだからです。
これら人工臓器に藻類を導入することでより高い生存性と大型化に役立つと考えられます。
実験では予想されたほどの激しい免疫反応がみられなかったことから、微生物との間にある程度の共生関係を構築できていたと考えられます。
また研究者たちは、植物プランクトンと脊椎動物の長期的な共生は、大気中の酸素の依存度を減らし、生息域を拡大するのに役立つと述べています。
もしかしたら未来の世界では、光合成で栄養だけでなく酸素も自給するような、完璧な動物が誕生しているかもしれません。