オタマジャクシを頭だけの状態にする
オタマジャクシの脳に光合成によって生じた酸素のみを届けるにはどうしたらいいか?
答えは、オタマジャクシからほとんどの体のパーツを奪うことにありました。
研究者たちはオタマジャクシを断頭して頭部のみの状態にして内臓も全て摘出。
さらに頭蓋骨を切開して前脳をその他の脳の部位から切り離す、一種のロボトミー手術を行うと同時に、視神経との連絡も切断しました。
また残った後脳に電極とセンサーを刺し込み、神経活動と酸素濃度を記録できるようにします。
この状態にしてもオタマジャクシの脳は生きていますが、自力での呼吸は不可能となり、脳へ酸素供給を行う方法は血管内部に存在する植物プランクトンによる光合成のみになります。
研究者たちは続いて、処置を終えたオタマジャクシの周囲の溶液から酸素を除去し、その後、光をあててみました。
すると光をあてられたオタマジャクシの脳で酸素濃度が上昇し、光を消すと酸素濃度が低下していくことが判明しました。
この結果は、光による光合成が脳の酸素消費量を補うに十分であることを示しますが、脳の神経活動が光合成由来の酸素に依存しているかどうかは、追加の検証が必要でした。
そこで研究者たちは酸素を枯渇させた状態を維持することにしました。
すると40分ほどでオタマジャクシの脳から神経活動が失われて仮死状態に陥ります。
ですが、この半分死んだような状態に光をあてると、15分ほどで脳での神経活動が復活することが判明します。
その後、明暗を繰り返すと、神経活動との相関関係が明らかになります。
オタマジャクシの脳は光があてられると酸素を得て復活し、暗くなると酸素不足で気絶する……というパターンを繰り返しました。
この結果は、オタマジャクシの脳の神経活動が、脳血管に潜む植物プランクトンが生産した酸素に依存していることを示します。