長い触角に、10本の脚と扇のような尾。
川から深海まで、世界に3,000種以上。
- ナゾロジーの記事
- 31本
- エビのなかま
- 3,000種以上
- アメリカンロブスター
- 20kg以上
エビは、カニやヤドカリと同じ十脚目の甲殻類のうち、カニとヤドカリをのぞいたなかまの呼び名です。世界に3,000種以上がいて、川から深海まで広くすみ、日本ではクルマエビやイセエビ、テッポウエビ、ザリガニなどが見られます。
図鑑データ
- 分類
- 節足動物 › 甲殻類(軟甲綱)› 十脚目(エビ目)のうち、カニ下目とヤドカリ下目をのぞいたなかま
- 学名
- 1つの学名はない(十脚目 Decapoda の一部をまとめた呼び名)
- 英名
- shrimp(シュリンプ)、prawn(プローン)、lobster(ロブスター)、crayfish(ザリガニ)
- 漢字
- 海老、蝦
- 種の数
- 世界に3,000種以上。コエビ下目だけで3268種(2009年の集計)
- 大きさ
- 多くは体長2cmほど。大きなものではアメリカンロブスターが体長64cm、体重20kg以上
- 体のつくり
- かたい頭胸甲におおわれた頭胸部と、6節の腹部。歩くための脚は5対10本。触角は2対で、そのうち1対がとても長い。尾の先は尾扇
- 呼吸
- 頭胸甲の内側、脚のつけ根の近くにあるえらで呼吸する
- すみか
- 川や湖から深さ5,000mの深海まで。川や湖など淡水にすむ種類も多い
- 日本では
- 川にテナガエビやヌマエビ、浅い海にクルマエビやテッポウエビ、岩場にイセエビ、深海にサクラエビやホッコクアカエビ(アマエビ)など
- 食べもの
- 多くは雑食。藻類、貝、ゴカイのなかま、小魚、死がいなど
- 寿命
- 多くは1〜7年。イセエビは20年以上、ロブスターは野生で45〜50年と推定
エビとは(何類? 何の仲間? カニとのちがい)
エビは、カニやヤドカリと同じ「十脚目(じっきゃくもく)」に入る甲殻類(こうかくるい)です。甲殻類は節足動物のなかまで、体はかたい殻(外骨格)でおおわれています。学校の理科で動物を分けるときも、エビは「節足動物」のなかまに入ります。
じつは「エビ」は、生き物の分類の正式なグループの名前ではありません。十脚目のなかから、カニのなかま(カニ下目)とヤドカリのなかま(ヤドカリ下目)をのぞいた残りを、まとめてエビと呼んでいます。泳ぐのに向いた体のクルマエビやコエビのなかまのほか、海の底を歩くイセエビやロブスター、川や池にすむザリガニも、エビのなかまです。カニのからだやくらしは「カニ」のページで紹介しています。
種類はとても多く、世界に3,000種以上がいます。いちばん種の多いコエビのなかま(コエビ下目)だけでも3268種、ザリガニやロブスターのなかま(ザリガニ下目)は653種が知られています(2009年の集計)。
英語では、小さなエビを shrimp(シュリンプ)、クルマエビくらいの大きさのエビを prawn(プローン)と呼ぶことが多いですが、使い分けは国や地域によってばらばらです。ハサミの大きなロブスターのなかまや、イセエビのような大きなエビは lobster(ロブスター)と呼ばれ、ザリガニは crayfish(クレイフィッシュ)です。

名前に「エビ」とついていても、エビではない生き物もいます。シャコ、ヨコエビ、オキアミなどです(あとの見出しで説明します)。
大きさと体のつくり(脚は何本? 背わたとエビミソ)
エビの多くは体長2cmほどの小さな生き物ですが、ウシエビ(ブラックタイガー)のように25cmをこえるものもいます。大きなものでは、北アメリカの大西洋岸にすむアメリカンロブスターが体長64cm、体重20kg以上になることがあり、とても重い甲殻類として知られます。

- 頭胸部(とうきょうぶ):頭と胸がひとつになっていて、かたい「頭胸甲」でおおわれています。前のはしには「額角(がっかく)」という、とがったつのがあり、その形は種を見分ける手がかりになります。両わきには、柄(え)の先についた目(複眼)があります。
- 触角:触角は2対あり、長いほうの触角は体の長さの2倍になることもあります。ふれたものを感じるほか、水にとけた物質から、においや味も感じとります。
- 脚:胸からは8対の付属肢が出ています。前の3対は「顎脚(がくきゃく)」で、えさをつかんだり、ちぎったりする口の一部です。残りの5対10本が歩くための脚で、「十脚目」という名前の由来です。種によっては、この脚の先がハサミになっています。
- えら:頭胸甲の内側、脚のつけ根の近くにえらがあり、水の中の酸素をとりこみます。
- 腹部と尾:腹部は6つの節に分かれ、中には筋肉がつまっています。腹の下の「腹肢(ふくし)」は、泳ぐときや卵をかかえるときに使います。尾の先は、扇のように広がった「尾扇(びせん)」です。
敵におそわれると、エビは腹部を勢いよく下に曲げて、後ろへ飛びのくように逃げます。ロブスターでは、このときに秒速5mの速さが記録されています。
背わたは何? エビの脳とエビミソ
エビの背中側にある黒っぽいすじは「背わた」と呼ばれ、正体は腸(消化管)です。砂などがふくまれていることがあり、いやなにおいのもとになるため、料理では取りのぞかれることがよくあります。
エビにも、カニミソの正体と同じ「中腸腺(ちゅうちょうせん)」という内臓があります。食べものの消化を助け、栄養をたくわえる働きをしていて、肝臓とすい臓の働きをあわせもつことから「肝膵臓(かんすいぞう)」とも呼ばれます。ロブスターでは、緑色の中腸腺が「トマリー」と呼ばれ、料理にも使われます。
エビミソは脳ではありません。甲殻類の脳は、触角の近くにある神経のかたまり(神経節)で、そこから体の節ごとの神経節が、はしごのようにつながっています。
なぜ茹でると赤くなる?
エビの殻には、赤い色素「アスタキサンチン」がふくまれています。生きているエビの殻では、この色素がたんぱく質と結びついていて、多くは赤い色がおさえられています(生きているときの色は種によってちがいます)。茹でたり焼いたりするとたんぱく質が変化して色素がはなれ、本来の赤い色が現れます。ロブスターでは、この色をおさえているたんぱく質を「クラスタシアニン」と呼びます。
アスタキサンチンは、もともと藻類などが作る色素で、エビは食べものを通してとりこんでいます。アスタキサンチンという名前は、ザリガニのなかまの「アスタクス属」からつけられました。
まれに、ふつうとちがう色のエビも見つかります。アメリカンロブスターでは、変わった色の個体はとても少なく、毎年とれる何百万匹のうち数匹ほどです。とれても食べずに海に放したり、水族館に寄付したりすることが多いといいます。

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どこにいる? 何を食べる?(日本のエビ)
エビは、川や湖から海岸、深海まで、いろいろな水の中にすんでいます。多くは海にすみますが、川や湖などの淡水にすむ種類も少なくありません。海では熱帯から極地まで見られ、深さ5,000mの深海でも見つかっています。
日本でも、すむ場所ごとにいろいろなエビが見られます。
- 川や池などの淡水:テナガエビ、スジエビ、ヌマエビのなかま、ニホンザリガニ、アメリカザリガニ
- 潮だまりや藻場:イソスジエビ、ホッカイエビ
- 浅い海の砂や泥の底:テッポウエビ、クルマエビ、シバエビ
- サンゴ礁や岩場:イセエビ、セミエビ、オトヒメエビ
- 深海:サクラエビ、シラエビ、ホッコクアカエビ(アマエビ)
クルマエビは、波のおだやかな内湾の砂や泥の底にすみ、昼は砂の中に浅くもぐって目だけを出して休み、夜になると動き回ります。イセエビは、外洋に面した浅い海の岩場にすみ、昼は岩のすきまにかくれています。

エビは、ほかの動物といっしょにくらすことも多い生き物です。カイメンやサンゴ、イソギンチャク、二枚貝、ウニなどをすみかにするエビがいて、とくにカクレエビのなかまは、体の色や形がすみかに合わせて変わっています。深海の熱水噴出孔(熱い水がふき出す場所)に群がるエビもいます。大西洋の海底にすむ Rimicaris exoculata には、ふつうの目がありませんが、背中側に光を感じる部分があり、えらの部屋の中に細菌をすまわせています。

陸の上でくらすエビは、ほとんどいません。カニやヤドカリには陸でくらす種がいますが、乾いた陸の上でくらせるエビは知られていません。ただし、キノボリエビのなかま(Merguia属)は、マングローブ林の湿った陸の上で、多くの時間をすごします。
何を食べる? 天敵は?
多くのエビは雑食で、いろいろなものを食べます。脚の毛をふるいのように使って、水の中の小さなものをこしとって食べるエビや、岩についた藻をけずりとって食べるエビもいます。クルマエビは藻類や貝、ゴカイのなかま、小魚、動物の死がいなどを食べ、イセエビは夜に貝やウニなどをおそい、じょうぶな大あごで殻をくだいて中身を食べます。ほかのえさが少ないと、なかまを食べる(共食いする)エビもいます。
サンゴ礁には、魚の体についた寄生虫や傷んだ組織を食べる「クリーナーシュリンプ(掃除エビ)」もいます。魚にとっては体をきれいにしてもらえ、エビにとってはえさが手に入る関係です。

エビは、魚や海鳥などに食べられ、海では魚からクジラまで、多くの動物の大切なえさになっています。イセエビの天敵には、サメやイシダイ、タコがいて、ウツボといっしょにくらすイセエビもいます。ウツボはイセエビをねらうタコを食べるので、イセエビは守ってもらえ、ウツボはえさにありつけるという関係です。
衝撃波を撃つテッポウエビ
テッポウエビのなかま(テッポウエビ科)は、世界中の海に広くすむエビです。体長は3〜5cmほどですが、片方のハサミが体の半分よりも大きくなる種が多くいます。日本の干潟でよく見られるテッポウエビ(Alpheus brevicristatus)は体長50〜70mmほどで、砂や泥の底に巣穴を掘って、オスとメスのつがいでくらします。

大きなハサミを開いてから一気に閉じると、「パチン!」と大きな音がします。2000年に発表された研究で、この音は、ハサミどうしがぶつかる音ではないことがわかりました。ハサミを閉じたときにふき出す速い水の流れの中に泡(キャビテーションの泡)ができ、その泡がつぶれるときに音が出るのです。泡は秒速25mの速さでハサミから飛び出し、つぶれるときの衝撃は、小さな魚を気絶させたり、殺したりするほど強力です。
泡がつぶれる瞬間には、目では見えないほど弱い光も出ます。もしこの光が熱によるものなら、4,700℃をこえる温度が必要になる計算です。群れでくらすテッポウエビの音は、海の中のとても大きな騒音のひとつで、ソナー(音波で水中を探る装置)や水中の通信のじゃまになることもあります。
ナゾロジーでくわしく「指パッチン」で4400℃のプラズマ衝撃波を発生させる”テッポウエビ”
テッポウエビのなかまには、ハゼと巣穴をいっしょに使うものもいます。巣穴を作って手入れをするのはエビで、目のよいハゼが見はり役をします。危険がせまると、ハゼは尾を動かして知らせ、エビは触角でハゼにふれて、その合図を受けとります。

自分の衝撃波から脳を守る「ヘルメット」
テッポウエビのなかまは、目の上を、殻がのびた「眼窩(がんか)フード」でおおっています。2022年に発表された研究では、Alpheus heterochaelis のこのフードを取りのぞくと、衝撃波を受けたあと、かくれ場所に向かうのがおそくなったり、体をうまく動かせなくなったりしました。フードは、中に水を閉じこめて押し出すことで衝撃波を弱める、ヘルメットのような働きをしていると考えられています。
2026年に発表された研究では、このフードの殻は、体をおおう甲羅とくらべてかたさが半分ほどしかなく、エネルギーを吸収する力は2倍あることがわかりました。コンピューターで計算すると、フードがあることで、衝撃波によって神経の組織に生じるひずみが28%、応力(面積あたりにかかる力)が22%へると見積もられました。
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女王がいるエビ
大西洋西部の熱帯のサンゴ礁には、カイメン(海綿)の中で、300匹をこえる群れをつくってくらすテッポウエビのなかま(Synalpheus regalis)がいます。群れのほとんどは、1匹の大きなメス(女王)の子どもです。子の世話をする個体と、大きなハサミで群れを守る個体に役割が分かれていて、アリやハチのような「真社会性」がエビでも見つかった例として知られています。
ザリガニとロブスター(大きなハサミのエビ)
ザリガニは、川や池、田んぼなどの淡水にすむ、ザリガニ下目のエビです。名前に「ガニ」とつきますが、カニのなかまではありません。同じザリガニ下目でも、アカザエビやロブスターは海にすんでいます。ザリガニやロブスターは、いちばん前の脚がとくに大きなハサミになっていて、敵に向かってふりかざしたり、はさんだりします。
日本にもともといたザリガニは、北海道と東北地方の北部にすむニホンザリガニだけです。「ザリガニ」という名前は、もともとこの種を指していて、江戸時代の「サリカニ」などの呼び名は「後ろに下がる(しさる)カニ」という意味だとされています。
アメリカザリガニ(日本中に広がった外来種)
いま日本でよく見かけるアメリカザリガニは、アメリカ南部のメキシコ湾岸が原産です。1927年に、食用として育てられていたウシガエルのえさとして日本に持ちこまれ、全国に広がりました。体の赤い色は、食べた植物にふくまれる物質から赤い色素を作るためで、青い個体もいます。寿命は環境によってちがい、飼育したものでは4〜5年生きることがあります。

アメリカザリガニは、池や田んぼの生き物に大きな影響をあたえます。2022年に発表された日本の湿地の調査では、アメリカザリガニがいない湿地で50種2405匹の水生昆虫が見つかったのに対し、いる湿地では23種316匹しか見つかりませんでした。とくに、水草をえさや卵を産む場所、とまり場に使う昆虫や、水の底にかくれる昆虫が大きく減っていました。
そのため、アメリカザリガニは2023年6月から、外来生物法の「特定外来生物」になりました。ただし、すでに多くの家庭で飼われていることから、一部の規制はゆるめられていて(条件付特定外来生物)、飼うことや、お金をとらずにゆずることは認められています。野外に放すことは禁止されています。
ナゾロジーでくわしく赤い殺し屋・アメリカザリガニの侵入域では「水生昆虫が激減する」と判明
人が使う薬が、ザリガニのふるまいを変えることもあります。2021年に発表された実験では、北アメリカのザリガニの一種(Faxonius limosus)を、抗うつ薬のシタロプラムが川で見つかる程度の濃さ(1リットルあたり0.5マイクログラム)でとけた水に14日間入れておくと、かくれ場所から早く出てくるなど、大胆にふるまうようになりました。
ザリガニは、脱皮の前に、殻の炭酸カルシウムの一部をとかして、胃の前のほうの壁に、左右1対の「胃石(いせき)」としてためておきます。脱皮のあとは、この胃石をとかして新しい殻を強くするのに使います。江戸時代の日本では、ニホンザリガニの胃石が薬として、高い値段で取り引きされていました。

ロブスター(痛みを感じる? 長生きする?)
ロブスターは、ザリガニ下目アカザエビ科のなかまのうち、ロブスター属の大きなエビです。ロブスターは、野生で45〜50年生きると見積もられています。年をとっても弱ったり、子を作る力が落ちたりしにくいとみられていて、おとなになっても多くの組織で「テロメラーゼ」という酵素が働いていることが、長生きと関係しているという説もあります。
ただし、ロブスターが死なないわけではありません。脱皮には多くのエネルギーが必要で、体が大きくなるほど負担が大きくなります。脱皮のときに力つきて死ぬロブスターは10〜15%にのぼり、年をとって脱皮しなくなった個体は、殻がいたんで死んでしまいます。
エビやカニが痛みを感じるかどうかも、研究されています。イギリスでは2021年11月、政府の依頼を受けたロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の研究チームが300件をこえる科学研究を調べた報告をもとに、政府が、カニや大型エビ、ザリガニなどの十脚目と、タコやイカのなかまを「感覚をもつ動物」としてあつかうことを決めました。2022年4月に成立した法律では、これらの動物も「感覚をもつ動物」にふくまれ、政府が政策を決めるときに、その福祉を考えなければならない対象になりました。スイスでは、ロブスターをゆでる前に、気絶させるか、すぐに殺すことが法律で求められています。ほかにも、甲殻類を意識があるままゆでることを禁じている国があります。
ナゾロジーでくわしくイギリス政府「ロブスターも痛みを感じる」と正式に認定
エビに似た別のなかま(シャコ・ヨコエビ・オキアミ)
名前に「エビ」とついていたり、姿がエビに似ていたりしても、エビではない甲殻類がたくさんいます。
- シャコ:寿司ダネでおなじみのシャコは、エビやカニと同じ軟甲綱(なんこうこう)に入りますが、エビやカニとの類縁は遠く、「シャコ目(口脚目)」という別のグループです。エビは頭と胸が1枚の殻でおおわれていますが、シャコは胸の後ろの4つの節が殻とくっついていません。エビのようなハサミもなく、かわりにカマキリの鎌のような「捕脚(ほきゃく)」をもっています。
- ヨコエビ:端脚目(たんきゃくもく)の小さな甲殻類で、多くは体長数mmです。石の下などで体を横にたおしてくらす種が多いことから、この名がつきました。2017年の集計では世界から9237種が知られ、深さ1万mをこえるチャレンジャー海淵でも見つかっています。
- オキアミ:オキアミ目の甲殻類で、体長3〜6cmほどです。姿は泳ぐエビによく似ていますが、胸の脚のつけ根にあるえらが殻の外に出ている点でちがいます。南極海のナンキョクオキアミは、クジラやアザラシ、ペンギンなど多くの動物の大切なえさです。
シャコのパンチ
シャコのなかま(シャコ目)は世界に520種以上がいて、捕脚で獲物をとらえます。捕脚には、とげで獲物を突きさすタイプと、こん棒のようなかたまりで殻をたたき割るタイプがあります。たたき割るタイプのモンハナシャコ(Odontodactylus scyllarus)は、止まった状態から秒速23mの速さで捕脚をくり出します。2004年に発表された研究では、そのとき獲物の近くに泡ができてつぶれるようすがとらえられ、泡がつぶれる力も獲物をこわすのに使われている可能性が示されました。
強いパンチをくり返しても、こん棒はこわれません。2025年に発表された研究では、こん棒の内側の、規則正しい層になった部分が、泡がつぶれるときに生まれる高い周波数のゆれ(応力波)をさえぎる「盾」として働いていることが示されました。また、なわばり争いでは、シャコどうしが丸めた尾をパンチで打ち合います。2024年の研究では、尾を地面から持ち上げて受けることで体全体がしなり、殻の形だけに注目した以前の研究の見積もりより約20%多くのエネルギーを吸収していることがわかりました。
ナゾロジーでくわしくシャコは自分のパンチ力で拳を痛めないよう「衝撃波を遮断」していた!
シャコの目
シャコの目は、柄の先について左右別々に動きます。人の目の光を感じる細胞は4種類ですが、シャコのなかまには、12〜16種類もの細胞をもち、紫外線から赤い光(波長300〜720nm)までを感じる種がいます。光の波の向きが回転する「円偏光」を見分けられるシャコもいます。
ところが、色を細かく見分けるのは意外に苦手です。2014年に発表された実験では、シャコは近い色どうしをうまく区別できませんでした。研究チームは、たくさんの種類の細胞と目をすばやく動かす方法を組み合わせて、色を細かく比べるのではなく、すばやく「見てわかる」しくみを使っているのではないかと考えています。

ナゾロジーでくわしく「シャコの目」にヒントを得たカメラ、手術中に隠れた癌を発見できる
増え方と一生(卵・幼生・寿命)
エビのなかまは、卵の守り方で大きく2つに分かれます。クルマエビやサクラエビのなかま(根鰓亜目=こんさいあもく)は、受精した卵をそのまま水の中に放します。そのほかのエビ(抱卵亜目)は、メスが卵を腹肢にかかえて、かえるまで守ります。
クルマエビのメスは、体長20cmのもので1回に70万〜100万個の卵を産みます。卵は半日ほどでかえり、丸い体に3対の脚がついた「ノープリウス幼生」から、「ゾエア幼生」「ミシス幼生」「ポストラーバ幼生」へと姿を変えて、やがて海の底でくらす稚エビになります。生まれた年の秋には10cm以上に育ち、寿命は1年半〜2年半ほどとみられます。
イセエビの子は「フィロソーマ幼生(葉状幼生)」と呼ばれ、木の葉のような平たく透明な体に、長い脚がついています。海流に乗って沖へ運ばれ、約300日もプランクトンとしてただよいながら、30回ほど脱皮して大きくなります。19世紀に見つかったときは、親とあまりに姿がちがうため、イセエビの子どもだとは思われませんでした。その後、親に似た形の透明な「プエルルス幼生」になって岸の岩場にもどり、稚エビになります。寿命は20年以上とされます。
画像はイメージです一方、ザリガニやミナミヌマエビのように、幼生の時期を卵の中ですごして、親とほぼ同じ姿で生まれてくるエビもいます。ザリガニのこの育ち方は、淡水でくらすための適応と考えられています。多くのエビの寿命は1〜7年ほどです。
エビは、かたい殻をぬぎすてる「脱皮」をくり返して大きくなります。アメリカンロブスターは、子どものころは年に10回ほど脱皮しますが、大きくなるにつれて回数がへり、数年に1回になります。
エビの子どもの育ち方は、人が海に置いたものからも影響を受けます。2022年に発表された実験では、ヨーロッパロブスターの卵を、海底の電力ケーブルを想定した磁場(2.8mT)の中で育てたところ、生まれた幼生は体が小さく、形の異常が多くなり、泳ぐテストに合格する割合も下がりました。
ナゾロジーでくわしく海底ケーブルの電磁波でエビの赤ちゃんが「カナヅチ」になると判明!
名前の由来と人とのかかわり(食べもの・アレルギー)
和語の「えび」は、もともとは葡萄(ぶどう)やその色のことでした。エビの色が葡萄の色に似ていることから、エビを「えび」と呼ぶようになったといわれます。今でも「葡萄色」と書いて「えびいろ」と読むことがあります。
漢字の「海老」は、曲がった腰と長いひげを、老人に見立てた書き方です。そのため、エビは長生きの象徴としてめでたいものとされ、江戸時代から正月の鏡餅などの飾りに使われてきました。もうひとつの漢字の「蝦」は、中国でもエビを表す字です。
イセエビの名前は、伊勢がおもな産地のひとつだったことなどからついたという説があります。太く長い触角を振り立てる姿がよろいを着た武士を思わせることから、「威勢がいい」縁起物として武家に好まれたともいわれます。また、夫婦がともに年をとり、死んだあとも同じ墓に入ることを「偕老同穴(かいろうどうけつ)」といいます。中国の古い詩集『詩経』に由来する言葉で、海綿動物のカイロウドウケツは、体の中にふつうドウケツエビのオスとメスがすみ、一生をそこですごすことから、この言葉にちなんで名づけられました。
食べものとしてのエビ
エビは世界中で食べられています。多くの種類のエビが食用にされ、1年に殺されるエビの数は、養殖で約4,400億匹、野生のもので約25兆匹と推定されています。エビの身は、たんぱく質やカルシウム、ヨウ素を多くふくむ一方、カロリー(食物エネルギー)は低めです。うま味のもとになるアミノ酸も多くふくまれています。
エビの養殖は、1970年代から中国などで本格的に始まり、2007年には養殖でとれる量が、野生のエビをとる量を上回りました。いちばん多く養殖しているのは中国で、タイ、インドネシア、インド、ベトナム、ブラジル、エクアドル、バングラデシュなども主な生産国です。養殖されたエビの多くは、アメリカやヨーロッパ連合(EU)、日本へ輸出されています。今の養殖の主役はバナメイエビ(ホワイトレッグシュリンプ)です。一方で、養殖場を作るためにマングローブ林が切られるなど、環境への影響も指摘されています。
日本では、クルマエビの養殖の研究が早くから進みました。明治時代に熊本県の天草で、とってきた稚エビを育てる試みが始まり、その後、藤永元作らが卵からかえして育てる方法を研究して、昭和38年(1963年)に山口県で養殖の会社を作りました。
エビアレルギー
エビやカニは、食物アレルギーを起こしやすい食べものです。日本では、加工食品にエビを使ったときに必ず表示しなければならない「特定原材料」に指定されています。アレルギーのおもな原因は、エビにふくまれる「トロポミオシン」というたんぱく質です。トロポミオシンはダニやゴキブリにもふくまれていて、ダニのアレルギーとの関係も指摘されています。
症状は、食べてから数分以内に出ることが多く、口や唇、舌、のどのかゆみ、じんましん、くちびるやまぶたのはれ、息苦しさなどがあります。エビを食べてのどがかゆくなったり、イガイガしたりするときは、アレルギーのことがあるので、医師に相談しましょう。
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よくある疑問
- エビは何類? 何群? 何科?
- エビは節足動物の甲殻類で、カニやヤドカリと同じ十脚目(エビ目)に入ります。動物を「〜類」「〜群」に分けるときは、節足動物のなかまです。「エビ」は1つの科の名前ではなく、クルマエビ科、テナガエビ科、テッポウエビ科、イセエビ科、アメリカザリガニ科など、たくさんの科をまとめた呼び名です。
- エビはなぜ茹でると赤くなるの?
- 殻にふくまれるアスタキサンチンという赤い色素のためです。生きているときは、この色素がたんぱく質と結びついて赤い色がおさえられていますが、加熱するとたんぱく質が変化して色素がはなれ、本来の赤い色が現れます。
- エビの背わたは何?
- 背わたは、エビの腸(消化管)です。砂などがふくまれていることがあり、いやなにおいのもとになるため、料理のときに取りのぞかれることがよくあります。
- エビの頭の「みそ」は脳みそ?
- 脳ではありません。エビには、カニミソの正体と同じ「中腸腺(肝膵臓)」という内臓があり、食べものの消化を助け、栄養をたくわえています。エビの脳は、触角の近くにある神経のかたまり(神経節)です。
- エビは何を食べる?
- 多くのエビは雑食で、藻類、貝、ゴカイのなかま、小魚、動物の死がいなどを食べます。水の中の小さなものをこしとって食べるエビや、魚の体の寄生虫を食べるクリーナーシュリンプもいます。
- エビはどこにいる? どこの国でとれる?
- エビは川や湖から海岸、深さ5,000mの深海まで、いろいろな水の中にすんでいます。食用のエビは養殖が多く、中国、タイ、インドネシア、インド、ベトナム、ブラジル、エクアドル、バングラデシュなどが主な生産国です。養殖されたエビの多くは、アメリカやEU、日本へ輸出されています。
- エビを食べるとのどがかゆくなるのはなぜ?
- エビアレルギー(甲殻類アレルギー)の症状のことがあります。おもな原因は、エビにふくまれるトロポミオシンというたんぱく質で、口やのどのかゆみ、じんましん、息苦しさなどが、食べて数分以内に出ることが多いです。気になるときは医師に相談してください。
- シャコはエビのなかま?
- シャコはエビに似ていて「シャコエビ」と呼ばれることもありますが、エビではありません。エビやカニと同じ軟甲綱に入るものの類縁は遠く、シャコ目(口脚目)という別のグループです。エビのようなハサミはなく、カマキリの鎌のような捕脚をもっています。
ナゾロジーで読む31本
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- 01 【5000万分の1】左右で色が真っ二つの奇跡のロブスターを発見
- 02 「シャコの目」にヒントを得たカメラ、手術中に隠れた癌を発見できる
- 03 指パッチンで超音速衝撃波を放つエビは自爆防止ヘルメットを装備していた
- 04 シャコは自分のパンチ力で拳を痛めないよう「衝撃波を遮断」していた!
- 05 海底ケーブルの電磁波でエビの赤ちゃんが「カナヅチ」になると判明!
- 06 人から排出される抗うつ薬が「ザリガニを恐れ知らずにさせる」と明らかに
- 07 シャコ同士の戦い、ボクサー顔負けの驚きの防御法を解明!
- 08 身体の左右で色と性別が異なる!?「ロブスター界のあしゅら男爵」が見つかる!
- 09 テッポウエビは爪パッチンの衝撃波で気絶しない「ヘルメット」を装着していた!
- 10 赤い殺し屋・アメリカザリガニの侵入域では「水生昆虫が激減する」と判明
- 11 イギリス政府「ロブスターも痛みを感じる」と正式に認定
- 12 シャコの目にインスパイアされた超高性能カメラが開発される シャコは「偏光」を感知する特殊な生き物
- 13 「指パッチン」で4400℃のプラズマ衝撃波を発生させる”テッポウエビ”
- 14 超強力「シャコパンチ」は、拳にナノ粒子をまとって”衝撃を吸収する”と判明
- 15 「最強」シャコパンチ、なぜか抵抗の低い空気中のほうが弱くなると判明
- 16 テッポウエビが発するプラズマ衝撃波をヒントにした「ハサミ型ロボット」が開発される
- 17 40年間「エビの子ども」と思われていた化石の正体は、24本脚の昆虫だった
- 18 巨大な眼をもつ「新種ヨコエビ」を種子島沖の深海で発見
- 19 日本初、二枚貝に共生する「新種の甲殻類」を発見【画像あり】
- 20 水中じゃなく「樹上で暮らすエビ」がインドネシアにいる
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同じ十脚目
参考文献
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ありがとうございます。編集部で確かめます。
表紙の写真: Chan T. Y. & Lin C. W.(フランス国立自然史博物館)(背景を黒く広げて加工)(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。











