80km/hのパンチを吸収・分散するシャコたちの防御術
人間のプロボクサーのハンドスピードが30~50km/hなのに対し、シャコは80km/h超えのパンチを繰り出します。
カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)の2020年の研究では、ハードパンチャーであるシャコは、「ナノ粒子をまとうことで自分の拳を守っている」ことが分かっています。
攻撃する側は、自分の体をしっかり守っているのです。
では、シャコ同士の争いにおいて、強力なパンチを受ける側のシャコたちは、どうして粉々に砕けてしまわないのでしょうか。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)に所属するパドリック・グリーン氏は、この点を調査するため、縄張り意識の強い2匹のシャコを殴り合わせ、その映像を通常のカメラの約1000倍にあたる毎秒3万~4万フレームで撮影しました。
その結果、シャコの驚くべき防御術が明らかになりました。
まずシャコ同士の殴り合いが始まると、攻撃を受けるシャコは、体の前に尾を持ってきて、まるで盾の様に扱います。
過去の実験では、この頑丈な尾の盾が、パンチの衝撃を69%低減できると分かっています。
しかし、今回の実験では、シャコは「尾の頑丈さ」だけに頼っているわけではないと判明しました。
なんと防御側のシャコは、パンチが当たった際に、体と尾をカールさせてまるでバネやクッションの様に衝撃を吸収していました。
さらに足や尾を海底から離して、体を水中に浮かべることで、踏ん張らずに衝撃を逃がしていることも分かりました。
これにより防御側のシャコは、パンチの衝撃をさらに20%多く吸収できていました。
つまりシャコたちは、パンチを受けて動くボクサーのような戦略を用いて、シャコパンチの衝撃を約90%も受け流していたのです。
ハードパンチャーであるシャコたちは、シャコ同士の争いにおいて、ただ頑丈なボディに頼るのではなく、衝撃を逃がす巧みなテクニックも活用していたことになります。
グリーン氏は、今後もシャコの防御について研究を続ける予定であり、世界に存在する400種類以上のシャコにおいて、尾の形状の違いがもたらす効果を調べていくつもりです。