テッポウエビは、衝撃波から自身を守るための「ヘルメット」を装着していた
テッポウエビは、衝撃波から自身を守るための「ヘルメット」を装着していた / Credit: Alexandra C.N. Kingston et al., Current Biology(2022)
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テッポウエビは爪パッチンの衝撃波で気絶しない「ヘルメット」を装着していた!

2022.07.06 Wednesday

テッポウエビは、水中で爪を勢いよく弾くことで、とてつもない衝撃波を生み出します。

しかし、テッポウエビは他の仲間がすぐ側で爪パッチンしても、何の影響もないことがわかっています。

その理由は、一体なぜなのでしょう?

米タルサ大学(University of Tulsa)が新たに研究したところ、テッポウエビは、衝撃波から身を守るための特殊な”ヘルメット”を装着していることが判明したのです。

研究の詳細は、2022年7月5日付で科学雑誌『Current Biology』に掲載されています。

Snapping shrimps have helmets to ward off shock waves from their claws https://www.newscientist.com/article/2327388-snapping-shrimps-have-helmets-to-ward-off-shock-waves-from-their-claws/
Snapping shrimp have helmets that protect their brains by dampening shock waves https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(22)01004-1?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982222010041%3Fshowall%3Dtrue

自らの衝撃波で気絶しないよう「ヘルメット」を装着していた!

テッポウエビの爪パッチンを模倣した装置
テッポウエビの爪パッチンを模倣した装置 / Credit:Science Advances

テッポウエビを知らない人もいるかも知れませんが、この生き物は爪を弾くことによって強力な衝撃波を発生させる特殊能力を持っています。

この超高速の圧力波は、ハンマーで殴るといった物理的な衝撃とはまったく質が異なり、目や、エラといった神経系を貫くようなダメージを与えます。

これをまともに食らった獲物は、たちまち気絶するか、あの世行きです。

「指パッチン」で4400℃のプラズマ衝撃波を発生させる”テッポウエビ”

しかし、テッポウエビ自身は、自分や近くの仲間が獲物を狙って衝撃波を放った際、脳などにダメージを受けている様子がありません。

これはテッポウエビ自身に衝撃波から身を守る何らかの防御策が備わっている可能性を示しています。

これまでの研究で、テッポウエビには、目と脳の周辺を覆う、硬質で透明な殻が存在するとわかっています。

これは、他の甲殻類には見られません。

そこで今回の研究チームは、この透明な殻が衝撃波から身を守るヘルメットとして機能しているのではないかと考え、調査を開始しました。

チームはまず、米東海岸のサウスカロライナ州沖にて、60匹のテッポウエビ(Alpheus heterochaelis)を捕獲し、外科手術によって、透明な殻を慎重に取り除きました。

しかし殻を除去しても、テッポウエビの行動や健康には何の悪影響も見られませんでした。

点線で囲った部分が目と脳を覆う透明のフード(矢印部分には、小さな穴が開いている)
点線で囲った部分が目と脳を覆う透明のフード(矢印部分には、小さな穴が開いている) / Credit: Alexandra C.N. Kingston et al., Current Biology(2022)

次に、殻を除去したテッポウエビの水槽に別のテッポウエビを入れ、すぐ側で爪パッチンをするよう誘導しました。

すると、殻を除去したテッポウエビは、仲間の衝撃波を受けた途端、正常に歩けなくなり、その場で回転したり、倒れて動けなくなったのです。

また、安全なシェルターへ戻ろうとしても、手足がうまく動かず、道に迷うようになりました。

一方で、殻ありのテッポエビに対して衝撃波を与えたところ、行動に影響はなく、シェルターへもまっすぐに戻ることができています。

衝撃波を受けた後のシェルターへ戻る時間を比較した結果、殻なしの個体は、殻ありの個体に比べ、約7倍も余分に時間がかかっていました。

つまりこの殻は自分や仲間の生み出した衝撃波から脳を守るヘルメットだったのです。

ヘルメットの有無で、シェルターに戻る時間に7倍の開きが出た
ヘルメットの有無で、シェルターに戻る時間に7倍の開きが出た / Credit: Alexandra C.N. Kingston et al., Current Biology(2022)

しかし、一般的に衝撃波は薄い防壁によって防げるものではありません。

一体どうして、テッポウエビは小さなヘルメットで自らの目や脳を守ることができたのでしょうか?

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