自らの衝撃波で気絶しないよう「ヘルメット」を装着していた!

テッポウエビを知らない人もいるかも知れませんが、この生き物は爪を弾くことによって強力な衝撃波を発生させる特殊能力を持っています。
この超高速の圧力波は、ハンマーで殴るといった物理的な衝撃とはまったく質が異なり、目や脳、エラといった神経系を貫くようなダメージを与えます。
これをまともに食らった獲物は、たちまち気絶するか、あの世行きです。
しかし、テッポウエビ自身は、自分や近くの仲間が獲物を狙って衝撃波を放った際、脳などにダメージを受けている様子がありません。
これはテッポウエビ自身に衝撃波から身を守る何らかの防御策が備わっている可能性を示しています。
これまでの研究で、テッポウエビには、目と脳の周辺を覆う、硬質で透明な殻が存在するとわかっています。
これは、他の甲殻類には見られません。
そこで今回の研究チームは、この透明な殻が衝撃波から身を守るヘルメットとして機能しているのではないかと考え、調査を開始しました。
チームはまず、米東海岸のサウスカロライナ州沖にて、60匹のテッポウエビ(Alpheus heterochaelis)を捕獲し、外科手術によって、透明な殻を慎重に取り除きました。
しかし殻を除去しても、テッポウエビの行動や健康には何の悪影響も見られませんでした。

次に、殻を除去したテッポウエビの水槽に別のテッポウエビを入れ、すぐ側で爪パッチンをするよう誘導しました。
すると、殻を除去したテッポウエビは、仲間の衝撃波を受けた途端、正常に歩けなくなり、その場で回転したり、倒れて動けなくなったのです。
また、安全なシェルターへ戻ろうとしても、手足がうまく動かず、道に迷うようになりました。
一方で、殻ありのテッポエビに対して衝撃波を与えたところ、行動に影響はなく、シェルターへもまっすぐに戻ることができています。
衝撃波を受けた後のシェルターへ戻る時間を比較した結果、殻なしの個体は、殻ありの個体に比べ、約7倍も余分に時間がかかっていました。
つまりこの殻は自分や仲間の生み出した衝撃波から脳を守るヘルメットだったのです。

しかし、一般的に衝撃波は薄い防壁によって防げるものではありません。
一体どうして、テッポウエビは小さなヘルメットで自らの目や脳を守ることができたのでしょうか?
なぜテッポウエビの「ヘルメット」は衝撃波を防げるのか?
さらに研究を進めると、衝撃波を受けたときヘルメット内側の圧力がヘルメット外側の圧力の約半分しかないことがわかりました。
研究主任のアレクサンドラ・キングストン(Alexandra Kingston)氏は、これが「ヘルメットの衝撃波に対する強い保護効果の証拠である」と指摘します。
衝撃波に対してヘルメットの内側で圧力が下がったということは、衝撃波の圧力をこのヘルメットがどこかへ逃しているということです。
その秘密は、ヘルメットの下側に空いた小さな穴にありました。
このヘルメットは普段は内側が水に満たされています。しかし衝撃波を受けると、この穴から水が噴出して圧力エネルギーを逃がしていたのです。
これにより目や脳の神経系に衝撃波のダメージが達することを防いでいると考えられるのです。
これは、脳などの神経系を衝撃波から保護する機能を持った生体アーマーシステムの最初の発見です。
キングストン氏は「こうした衝撃波は物体を突き抜けてくるため、軍部が使用する従来のボディーアーマーですら身を守るのは難しい」と説明します。
軍や警察の爆発物処理班などが用いる強固な対爆スーツであっても、目の前で起きる爆発の衝撃に対しては気休めにしかなりません。

「しかし、今回判明したテッポウエビのヘルメットをヒントにすることで、他の材料科学者やエンジニア、そして軍部と協力しながら、二次的な爆風エネルギーに対抗しうる保護材料の開発が期待できる」と研究者は述べています。
テッポウエビが備えるヘルメットは、人間のテクノロジーですらまだ実現していない強力な防具の可能性があります。
今、ハリウッドを中心にヒーロー映画ブームが到来していますが、そろそろ”テッポウエビマン”を登場させてもいいかもしれません。
記事内の一部表現について、修正して再送しております。




















