かたい甲羅に10本の脚、先頭の2本はハサミ。
海から川、森の中まで広がった。
- ナゾロジーの記事
- 35本
- カニのなかま
- 約7,000種
- 脚を広げたタカアシガニ
- 3m以上
カニは、エビやヤドカリと同じ十脚目の甲殻類で、甲羅の下に短い腹部を折りたたんだ体をもちます。世界に約7,000種がいて、海から川、陸の上まで広くすみ、日本ではサワガニやシオマネキ、ズワイガニなどが見られます。
図鑑データ
- 分類
- 節足動物 › 甲殻類 › 十脚目(エビ目)› カニ下目(短尾下目)
- 学名
- Brachyura(カニ下目のなかま全体の名前)
- 英名
- crab(クラブ)
- 漢字
- 蟹
- 種の数
- 98科・約7,000種。そのうち淡水にすむものは約1,300種
- 大きさ
- 甲羅の幅が数mmのピンノのなかまから、脚を広げると3mをこえるタカアシガニまで
- 体のつくり
- かたい甲羅(頭胸甲)と、5対10本の脚。いちばん前の1対がハサミ。短い腹部は甲羅の下に折りたたまれる
- 呼吸
- 甲羅の両わきにあるえらで呼吸する
- すみか
- 熱帯から極地までの世界中の海。一部は川などの淡水や、海岸近くの陸の上
- 日本では
- 川にサワガニ、干潟にシオマネキ、岩の多い海岸にイソガニ、深海にズワイガニやタカアシガニなど
- 食べもの
- 多くは雑食。藻類、貝、ゴカイのなかま、ほかの甲殻類、死がいなど
- 増え方
- メスが腹部に卵を抱く。多くは、ゾエア幼生 → メガロパ幼生 → 稚ガニと育つ。サワガニはカニの姿で生まれる
カニとは(何類? エビやヤドカリとのちがい)
カニは、エビやヤドカリと同じ「十脚目(じっきゃくもく)」に入る甲殻類(こうかくるい)です。甲殻類は、昆虫やクモと同じ節足動物のなかまで、体はかたい殻(外骨格)でおおわれています。生き物の分類では、カニのなかまは「カニ下目(短尾下目)」というグループにまとめられています。
カニの体は、大部分が甲羅におおわれた「頭胸部」です。エビやヤドカリとちがって腹部は短く、ふだんは甲羅の下側に折りたたまれています。世界中の海から川、陸の上まで広くすんでいて、98科・約7,000種が知られています。
英語では crab(クラブ)と呼ばれます。ただし英語の crab は、カニ下目のなかまだけでなく、カニに似た形のヤドカリのなかま(タラバガニなど)もふくむ、広い呼び名です。

タラバガニやカブトガニはカニ?
名前に「カニ」とついていても、カニ下目に入らない生き物がいます。タラバガニやヤシガニは、見た目はカニにそっくりですが、分類ではヤドカリのなかま(異尾下目)です。ただし水産業や料理の世界では、カニ下目のなかまといっしょに「カニ」としてあつかわれています(くわしくは、あとの「カニ化」の見出しで説明します)。
カブトガニは、もっと遠い親せきです。かたい甲羅をもちますが、体のつくりはカニとまったくちがい、クモやサソリと同じ「鋏角類(きょうかくるい)」のグループに入ります。
大きさと体のつくり(脚は何本? カニミソとは?)
カニの大きさは、種によって大きくちがいます。小さなものでは、二枚貝の体の中でくらすピンノのなかま(カクレガニ科)のように、甲羅の幅が数mmしかないものもいます。大きなものでは、日本近海の深海にすむタカアシガニがいて、脚を広げると3mをこえ、甲羅の幅は最大40cm、体重は最大19kgになります。

- 甲羅と目:背中側は、キチン質のかたい甲羅(頭胸甲)でおおわれています。甲羅の前のはしからは、柄(え)のついた目(複眼)が2つつき出ていて、ふだんはすぐ外側のみぞに倒してしまっておけます。触角は2対ありますが、どちらもごく短いです。
- 脚:脚は5対10本です。いちばん前の1対がハサミ(鉗脚=かんきゃく)で、残りの4対は歩くための脚です。ただし例外もあり、ムツアシガニのなかまは歩く脚が3対しかありません。ワタリガニのなかまは、いちばん後ろの脚がひれのように平たく、歩くより泳ぐほうが得意です。
- 腹部(ふんどし):エビのような長い腹部や尾びれはなく、短い腹部が甲羅の下側に折りたたまれています。その形から「ふんどし」とも呼ばれます。オスの腹部は幅がせまく、メスの腹部は卵を抱くために幅が広くなっています。

体がかたい殻でおおわれているため、カニは大きくなるたびに古い殻をぬぎすてる「脱皮」をします(あとの「増え方」の見出しで説明します)。
カニミソは脳みそ? カニの脳はどこ?
カニの甲羅をはずしたときに見える、茶色から濃い緑色のペースト状の部分が「カニミソ」です。名前に「ミソ」とつきますが、脳みそではありません。正体は「中腸腺(ちゅうちょうせん)」という内臓で、食べものの消化と、栄養をたくわえる役目をしています。背骨のある動物の肝臓とすい臓の働きをあわせもつと見なされ、昔は「肝膵臓(かんすいぞう)」とも呼ばれました。
甲殻類の脳は、触角の近くにある神経のかたまり(神経節)です。腸の下側にも、大きな神経節がまとまってあります。
カニは、道を覚えることもできます。2019年に発表された実験では、ヨーロッパミドリガニに、4週間続けて、えさを置いた迷路を通らせました。2週間後、えさを置かずに同じ迷路に入れると、訓練したカニはすべて8分以内に迷路の奥までたどり着きました。訓練していないカニはずっと時間がかかり、42%は1時間のうちに奥まで行きませんでした。
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なぜ茹でると赤くなる?
食用のカニの多くは、茹でると殻が赤くなります。これは、殻にふくまれる「アスタキサンチン」という色素のためです。生きた甲殻類の殻の中では、アスタキサンチンはたんぱく質と結びついていて、黒っぽい青灰色に見えます。加熱するとたんぱく質が変化してアスタキサンチンがはなれ、本来の赤い色が現れるのです。
アスタキサンチンのもとは藻類などが作る色素で、カニは、食べ物を通して取りこんだり、食べ物にふくまれる別の色素から作りかえたりしています。

ハサミと横歩き(カニならではのふしぎ)
カニのハサミ(鉗脚)は、えさをつかんだり、敵をおどしたりするのに使われます。オスでは、片方のハサミだけが大きくなる傾向があります。
左右で大きさがちがうハサミ(シオマネキ)
とくに目立つのが、干潟などにすむシオマネキのなかまです。成体のオスは、片方のハサミが甲羅と同じくらいの大きさになります。大きいのが右か左かは、個体によってちがいます。オスは大きなハサミを振る「ウェービング」でメスに求愛し、えさを食べるときは、もう片方の小さなハサミを使います。和名の「シオマネキ(潮招き)」は、ハサミを振るようすが、潮が早く満ちてくるように招いているように見えることからついた名前です。
大きなハサミを保つには、たくさんのエネルギーが要りそうです。ところが2022年に発表された研究では、シオマネキのなかま(Uca pugilator)などで、ハサミが大きいほど、維持にエネルギーのかかるやわらかい組織の割合が小さく、維持のエネルギーが少なくてすむ殻(外骨格)の割合が大きいことがわかりました。

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ハサミを自分で切りはなす? 再生する?
シオマネキなどのカニは、脚やハサミをなくしても、次の脱皮のときに新しいものが生えてきます。シオマネキのなかまでは、けんかで大きなハサミがもげたり、傷ついたハサミを自分で切りはなしたり(自切)することがあります。次の脱皮で新しいハサミが生えますが、大きさは同じくらいでも、ずっと弱いことが多いとされています。
カニの種類によっては、ハサミだけをとって、カニは生きたまま水にもどす漁も行われています。アメリカのフロリダ州などで行われているストーンクラブ(stone crab)の漁がその例です。ただし実験では、両方のハサミをとられたカニの47%、片方をとられたカニの28%が死んでしまいました。
イソギンチャクをハサミに持つカニ
インド洋や太平洋の暖かい浅い海には、左右のハサミに小さなイソギンチャクを1つずつはさんで持ち歩く、キンチャクガニのなかま(Lybia属)がいます。体は大人でも1〜2cmほどです。ハサミには小さなかぎがついていて、イソギンチャクをしっかりつかめますが、ほかのことにはほとんど使われません。英語では、ボクシングのグローブやチアリーダーのポンポンにたとえて、boxer crab(ボクサーガニ)や pom-pom crab と呼ばれます。
イソギンチャクを1つなくすと、カニは残った1つを2つに引きさきます。さかれたイソギンチャクはそれぞれ再生して、また左右に1つずつそろいます。2017年に発表された研究では、1匹のカニが持つ2つのイソギンチャクは、遺伝的に同じ(クローン)であることが確かめられました。両方なくしたカニは、ほかのカニからうばうこともあります。

なぜ横歩きするの?
カニといえば横歩きです。多くのカニは、脚の関節のつくりから、横に歩くほうが効率がよくなっています。一方で、前や後ろに歩くカニもいます。たとえばミナミコメツキガニは前に歩き、カラッパのなかまは後ろに歩きます。
2026年に発表された研究では、生きた50種のカニの歩き方を調べ、35種を横歩き、15種を前歩きに分けました。さらに種どうしの系統(進化の枝分かれ)と合わせて調べ、横歩きは、前に歩く祖先から一度だけ生まれたと考えられることを示しました。これまでに推定された分岐の年代をもとにすると、その時期は約2億年前、ジュラ紀のはじめごろです。その後、少なくとも6回、前歩きにもどったグループがありました。横歩きが生まれた系統は、近いグループよりずっと種の数が多く、横歩きがカニの多様化を後押しした可能性があるといいます。
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えら呼吸と、泡を吹くわけ
カニは、甲羅の両わきにある「えら」で呼吸します。そのため、生きるには水が欠かせません。水からあげられて体の水分が足りなくなると、カニはえらから泡を吹きます。えらの上の水が蒸発したり、えらの粘液がまじったりして、ねばりけが出るためです。陸でくらすカニも、ときどき水分をとる必要がありますが、長い乾燥にたえられるので、泡を吹くことは少ないとされています。

えらに特別な働きをもつカニもいます。クイシャン島(Kueishan Island)の沖の浅い海にある熱水噴出孔は、世界でもとくに酸性が強く、硫化物の多い場所の一つです。そのすぐ近くで記録されている多細胞の動物は、Xenograpsus testudinatus というカニ1種だけです。2023年に発表された研究で、このカニはえらで硫化物を毒の弱い物質に変えていること、えらの中にすむ細菌もそのしくみにかかわっているらしいことがわかりました。
どこにいる? 日本のカニ
カニは、熱帯から極地まで世界中の海にすみ、一部は海岸近くの陸の上や、川などの淡水にもすんでいます。種類がとくに多いのは熱帯で、淡水にすむカニだけでも約1,300種が知られています。多くは河口の汽水域や海岸から海の中にすみ、マングローブ林で木に登るもの、干潟に深い巣穴を掘るもの、深海や洞窟にすむものもいます。
日本でも、すむ場所ごとにいろいろなカニが見られます。
- 川などの淡水:サワガニ、モクズガニ
- 川辺や海岸の近く:アカテガニ、ベンケイガニ
- 砂浜や干潟:スナガニ、コメツキガニ、シオマネキ
- 岩の多い海岸:イソガニ、イワガニ
- 浅い海の底:ガザミ、ケガニ、ヘイケガニ
- 深海:ズワイガニ、タカアシガニ
- 貝の体の中:オオシロピンノなどのピンノのなかま
サワガニ(一生を川でくらすカニ)
サワガニは日本の固有種で、北海道の渡島半島からトカラ列島まで分布するとされています。甲羅の幅は20〜30mmほどです。甲羅が黒っぽい茶色で脚が朱色のものが多いですが、青白いものや紫がかったものもいて、よく見られる色は地域によってちがいます。水のきれいな渓流や小川に多く、きれいな水のしるし(指標生物)にもなっています。
多くのカニの子は、幼生として水中をただよってすごします。ところがサワガニは、幼生の時期を卵の中ですごし、カニの姿で生まれてきます。そのため一生を淡水ですごし、遠くへ移動しにくいので、地域ごとに遺伝子のちがいが見られます。
2023年に発表された研究では、日本各地の138地点から集めた283匹の遺伝子を調べ、はっきり分かれた10のグループを見つけました。グループはおもに海峡で分かれていましたが、海流に乗って海をわたったことを示す強い証拠も見つかりました。実験で、サワガニが海水の中でも生きられることも確かめられています。

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ズワイガニやタラバガニはどこでとれる?
食用として人気のズワイガニは、日本では山口県から東の日本海にすみ、ほかにも茨城県から東、カナダまでの北太平洋、オホーツク海、ベーリング海に広く分布します。水深50〜1,200mの砂や泥の海底にすみ、とくに水深200〜600m、水温0〜3℃の場所を好みます。水あげされる地域ごとに呼び名があり、オスは「越前ガニ」(福井県)や「松葉ガニ」(北近畿・山陰地方)などのブランド名でも知られています。
ベーリング海の東部では、2018年から100億匹をこえるズワイガニが姿を消し、2021年には数が過去最低の水準まで落ちこみました。2023年に発表された研究は、2018〜2019年にこの海で起きた「海洋熱波(海水温が異常に高くなる現象)」と結びつけ、えさが足りなくなったことが関係したと考えています。
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カニの形をしたヤドカリのなかまのタラバガニは、日本ではおもにオホーツク海でとられています。
何を食べる? 共食いもする?
多くのカニは雑食です。おもに藻類を食べますが、貝などの軟体動物、ゴカイのなかま、ほかの甲殻類、菌類、細菌、生き物の死がいや破片(デトリタス)など、いろいろなものを食べます。植物と動物の両方を食べると、いちばん早く育つことが多いとされます。
食べ方に特徴のあるカニもいます。シオマネキのなかまは、砂や泥をハサミでつまんで口に運び、その中にふくまれるえさをこしとって食べます。タカアシガニは、ハサミの内側にならぶ丸い突起で、貝などをくるみ割りのように割って食べます。カキの殻の中にすみ、カキが集めたえさを横取りして食べる小さなカニ(oyster crab)もいます。
2026年には、沖縄の西の沖を漂流していたプラスチックのボトルの中から、ボトルの口(直径24mm)より大きく育った、泳ぐカニのなかまのメス(Portunus sanguinolentus)が見つかったと報告されました。胃の中を調べると、ボトルのまわりにいた稚魚や、ボトルの中で育ったとみられる藻類を食べていて、ボトルは62日ほど漂流していたと推定されました。
カニは共食いする?
カニには、なかまを食べる「共食い」をするものがいます。ヨーロッパミドリガニでは、大人のカニが、新しく加わった若いカニを食べることで、数の増えすぎがおさえられています。外来種としてすみついた場所で、このカニを根絶しようと、とりのぞく作業を続けたところ、大人のカニが減ったために若いカニが食べられなくなり、1年で数が30倍に増えてしまいました(2021年に発表)。
ほかにも、アメリカ大陸の太平洋岸などの岩場にいる Grapsus grapsus は、数が多すぎたり、えさが少なかったりすると共食いをすることが知られています。クリスマスアカガニも、死んだなかまを食べることがあります。
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増え方と一生(脱皮して大きくなる)
カニは、フェロモン(においの物質)や見た目、音、振動でメスを引きつけます。水の中だけでくらすカニはフェロモンを使い、陸や水辺のカニは、シオマネキのオスが大きなハサミを振るように、目で見える合図を使うことがあります。水の中にすむ種の多くでは、メスが脱皮した直後の、殻がまだやわらかいときに交尾します。
受精した卵は、メスの腹部にくっつけられ、守られながら育ちます。卵からかえった子は「ゾエア幼生」と呼ばれ、プランクトンとして水中をただよいます。何度か脱皮すると、腹部が後ろにつき出ていること以外は親に似た「メガロパ幼生」になり、もう1回脱皮すると小さなカニ(稚ガニ)になって、水の底でくらしはじめます。
陸でくらすカニも、多くは幼生を放すために海まで行きます。日本のアカテガニも、初夏の新月の夜などに海岸に集まり、水の中に幼生を放します。インド洋のクリスマス島では、毎年、雨季のはじめに、クリスマスアカガニが森から海岸へ大移動します。何百万匹ものカニが一度に地面をうめつくし、道路が通行止めになることもあります。海で3〜4週間すごした幼生はメガロパになり、甲羅の幅が5mmほどの小さなカニになって陸に上がります。クリスマスアカガニは4〜5年でおとなになり、寿命は12年ほどです。


カニは、かたい殻でおおわれているので、大きくなるには脱皮をくり返す必要があります。脱皮が近づくと、古い殻の下で新しい殻のもとが作られます。脱皮のときは水をたくさん吸って体をふくらませ、甲羅の後ろのはしにそった弱い線から古い殻を割ります。脚や口、目の柄を古い殻からぬき出し、消化管の入り口側と出口側の内側の皮もぬぎます。これには何時間もかかることがあり、失敗すると死んでしまいます。脱皮したばかりのカニはとてもやわらかいので、新しい殻がかたまるまでかくれています。
寿命は種によってちがいます。サワガニは数年から10年ほどとされます。ズワイガニは、生まれてから親になるまでに約10年かかり、最後の脱皮のあと4年ほど生きます。
「カニ化」とヤドカリのなかま
甲殻類の進化では、カニではないものがカニに似た体に進化することが、何度も起きてきました。これを「カニ化(カーシニゼーション)」といいます。1916年に、動物学者のボラデイル(L. A. Borradaile)が「自然がカニを作ろうとした、たくさんの試み」と表現したのが始まりです。カニ化した体は、甲羅が平たく横に広く、腹部が平たくなって体の下に折れ曲がっているのが特徴です。
カニ化は、少なくとも5回、別々に起きたと考えられています。1回はカニ下目(本当のカニ)で、残りはタラバガニやカニダマシなど、ヤドカリに近い異尾類のなかまです。反対に、カニの形を失う「脱カニ化」も、何度も起きています。カニの形が何度も現れた理由としては、内臓を守れること、重心が低くなり横歩きで逃げやすいこと、岩やサンゴのすきまにかくれやすいことなどが考えられています。
2019年ごろからは、「どんな生き物もいずれカニに進化する」というジョークがインターネットで広まりました。ただし研究者は、カニに似た生き物はすべて十脚目の甲殻類で、カニ化をうながすのは海の環境ならではの事情なので、人がカニになるわけではないと説明しています。
ナゾロジーでくわしく「カニ」への進化を繰り返した甲殻類の系譜が明らかに! タラバガニがヤドカリに分類される理由
タラバガニは「カニの形をしたヤドカリ」
タラバガニは、見た目も呼び名もカニですが、分類ではヤドカリのなかま(異尾下目)です。メスの腹部が左右で形がちがい、腹肢(ふくし)が左側にしかないことや、いちばん後ろの脚が小さく、えらの入った部屋(鰓室)の中にさしこまれていることなどが、ヤドカリと共通しています。そのため、ふつうのカニには10本の脚があるのに対し、タラバガニは8本しかないように見えます。
甲羅の幅は25cmほどで、脚を広げると1mをこえます。北太平洋や日本海、北極海の冷たい海にすみます。名前は、すむ場所がタラの漁場(鱈場)と重なることに由来するといわれます。生きているときは背中側が暗い紫色ですが、茹でると赤橙色になります。

ヤシガニ(陸でくらすヤドカリのなかま)
ヤシガニも、オカヤドカリ科に入るヤドカリのなかまです。体重は最大4.1kgに達し、陸でくらす節足動物として最大級です。子どものうちはヤドカリと同じように巻貝の殻に入って身を守りますが、成長すると腹部にもかたい外骨格ができ、殻を持ち歩かなくなります。
ヤシガニのハサミはとても強力です。2016年に発表された研究では、野生のヤシガニ29匹のはさむ力を測り、最大の力は29.4〜1,765.2N(ニュートン)でした。体重との関係から、これまでに知られる4kgの大きな個体なら、約3300Nになると見積もられています。これは、ほかの甲殻類のはさむ力や、陸の多くの捕食動物のかむ力を大きく上回ります。

ヤドカリとのちがい
ヤドカリ(ヤドカリ上科)は世界に1000種以上いて、多くは巻貝の殻に体を入れ、背負ってくらします。腹部は長くやわらかい袋のようで、巻貝の殻に合わせてらせん状になっています。カニのように腹部を甲羅の下に折りたたむのではなく、借りた殻の中で腹部を守っているのです。最近は、貝殻のかわりにプラスチックのキャップなどを使うヤドカリも見られ、2024年に発表された研究では、陸にすむヤドカリ16種のうち10種で、人工物を殻にしている例が確認されました。
カニはいつからいる?(化石)
いちばん古いカニの化石は、ジュラ紀前期(約1億8000万年前)のもので、イギリスの地層から見つかったエオカルシヌスです。ただし今のカニの特徴のいくつかがまだそろっていない、祖先に近いなかまとされています。カニは白亜紀を通して種類を増やし、白亜紀の終わりまでに、十脚目の中で中心となるグループになりました。
2021年には、ミャンマーの白亜紀(約1億〜9900万年前)の琥珀から、琥珀に閉じこめられたカニの化石が初めて報告されました。大きな複眼や口、えらまで残っていて、今のカニに近い姿でした。海ではなく、汽水か淡水の水辺で琥珀に閉じこめられたと考えられています。2019年には、コロンビアとアメリカの白亜紀中ごろの地層から、大きな目とオールのような脚をもち、カニらしくない姿をしたカニ「カリキマエラ(Callichimaera perplexa)」の化石も報告されました。
名前の由来と人とのかかわり
漢字では「蟹」と書きます。虫へんがついていますが、昔の「虫」は、昆虫だけを指す字ではありませんでした。古代中国では「蟲」という字が生き物全体を表し、カメや甲殻類、貝は「介蟲」と呼ばれていました。本草学でも、「虫」は人・けもの・鳥・魚以外の小さな動物をまとめた呼び名でした。
英語では crab、ラテン語では cancer といいます。星座の「かに座」は、ラテン語で Cancer です。病気の「がん」を英語で cancer と呼ぶのも、腫瘍とそのまわりの形がカニに似ていることから、ラテン語の「カニ」をとって名づけられたためです。
カニは「1杯(はい)」「1匹(ひき)」と数えます。
食べものとしてのカニ
カニは、世界でとられたり養殖されたりして食べられている海の甲殻類の約20%をしめ、その量は年に150万トンにのぼります。そのうち5分の1がガザミです。日本では、ズワイガニ、ケガニ、ガザミなどが食用にとられ、身のほかにカニミソも食べられます。
一方、カニは食物アレルギーを起こしやすい食品とされ、日本では、エビとともに、原材料に使ったことを表示しなければならない「特定原材料」になっています。また、サワガニやモクズガニなど淡水のカニを十分に加熱せずに食べると、肺吸虫(はいきゅうちゅう)という寄生虫に感染するおそれがあります。
外来種と、海の環境の変化
人に運ばれて、もともといなかった場所で増えるカニもいます。ヨーロッパミドリガニは、北東大西洋とバルト海が原産ですが、オーストラリアや南アフリカ、南アメリカ、北アメリカの両岸にも入りこみ、「世界の侵略的外来種ワースト100」の一つにあげられています。西大西洋とメキシコ湾が原産のアオガニ(ブルークラブ)も、船のバラスト水によって日本やヨーロッパの海に運ばれました。イタリアでは、このカニが二枚貝の漁に大きな被害を出していて、駆除が進められています。
海の中に人が置いたものも、カニのくらしに影響します。海で発電する設備などとつながる海底の電力ケーブルからは、電磁場が出ています。2021年に発表された実験では、ヨーロッパイチョウガニが、強い電磁場(500µTと1000µT)の出るかくれ場所に引き寄せられ、動き回る時間が減りました。乳酸やブドウ糖の量の1日のリズムにも、乱れが見られました。
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よくある疑問
- カニは何類? 何科? 何の仲間?
- カニは節足動物の甲殻類で、エビやヤドカリと同じ十脚目に入ります。分類では「カニ下目(短尾下目)」というグループにまとめられ、1つの科ではなく、98科・約7,000種に分かれています。
- カニミソは脳みそ? カニの脳はどこにある?
- カニミソは脳ではなく、「中腸腺」という内臓です。食べものの消化と栄養をたくわえる役目をしていて、昔は「肝膵臓」とも呼ばれました。甲殻類の脳は、触角の近くにある神経のかたまり(神経節)です。
- カニはなぜ横歩きするの?
- 多くのカニは、脚の関節のつくりから、横に歩くほうが効率がよいためです。2026年に発表された研究では、横歩きは前に歩く祖先から一度だけ生まれ、その時期は約2億年前と考えられています。前や後ろに歩くカニもいます。
- カニは何呼吸? なぜ泡を吹くの?
- カニは、甲羅の両わきにあるえらで呼吸します(えら呼吸)。水からあげられて体の水分が足りなくなると、えらの上の水が蒸発したり、えらの粘液がまじったりしてねばりけが出て、泡を吹きます。
- カニはなぜ茹でると赤くなるの?
- 殻にふくまれるアスタキサンチンという色素のためです。生きているときは、アスタキサンチンがたんぱく質と結びついて黒っぽい青灰色に見えますが、加熱するとたんぱく質からはなれ、本来の赤い色が現れます。
- カニは何を食べる? 共食いもする?
- 多くは雑食で、藻類のほか、貝、ゴカイのなかま、ほかの甲殻類、死がいなどを食べます。共食いをするカニもいて、ヨーロッパミドリガニでは大人が若いカニを食べることで、数の増えすぎがおさえられています。
- カニのハサミは再生する? 自切するの?
- シオマネキなどのカニは、脚やハサミをなくしても、次の脱皮のときに新しいものが生えてきます。シオマネキのなかまでは、傷ついたハサミを自分で切りはなす(自切する)ことがあります。ただし生えてきたハサミは、もとより弱いことが多いとされています。
- タラバガニはカニじゃないの?
- タラバガニは、見た目も呼び名もカニですが、分類ではヤドカリのなかま(異尾下目)です。メスの腹部が左右で形がちがうことなどがヤドカリと共通していて、脚は8本しかないように見えます。水産業や料理の世界では「カニ」としてあつかわれています。
ナゾロジーで読む35本
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- 01 外来カニの侵略対策に「8万匹のタコ」を導入、イタリア
- 02 漂流するボトルに閉じ込められ「2カ月を生き延びたカニ」を発見
- 03 カニが「横歩き」を始めた時代が明らかに
- 04 激レアすぎる「紫色のカニ」をタイで発見
- 05 ボクサー蟹がイソギンチャクグローブを「クローン再生」させる瞬間、初撮影に成功!
- 06 「消されたので増えます」外来種を根絶すると、逆に”爆発的に増加する”場合がある!
- 07 脳みそでも味噌でもない「カニミソ」とはなんなのか?
- 08 【奇跡の遭遇】激レアな「タラバガニの赤ちゃん」を深海ゴミから発見!
- 09 渓流で一生を過ごす淡水種なのに「サワガニ」は海流に乗って分散していた!
- 10 100億匹のズワイガニがベーリング海から消失した原因を解明!
- 11 エラで硫化水素を浄化!? 世界で最も酸性度の高い海で生きる「カニ」の謎を解明!
- 12 わずか3年で80億匹のズワイガニが消えた! ベーリング海に起きている異変とは?
- 13 まるでチューバッカみたいな全身モフモフの新種カニを発見!
- 14 シオマネキは「大きな爪を安く作る」裏ワザを開発していた
- 15 視覚が極端に発達した白亜紀の奇妙なカニの生態
- 16 1億年前の琥珀に「現代カニとして最古の化石」を発見
- 17 海底ケーブルが「カニを誘惑している」と明らかに
- 18 硬すぎる!「ヤシガニ」のハサミ構造を解明、はさむ力はライオンの噛む力に匹敵
- 19 「カニ」への進化を繰り返した甲殻類の系譜が明らかに! タラバガニがヤドカリに分類される理由
- 20 毒イソギンチャクを挟んだ拳でパンチを繰り出す「キンチャクガニ」 その共生関係がナゾすぎる
- 21 実は賢い?ハチの10/1の脳しかないカニが2週間も同じ記憶を保てると判明
- 22 進化を迷走したカニ!?いろんな生物パーツを持つキメラの化石が発見される
- 23 貯めすぎて浮いちゃう! カニはメタンの泡を食べていた
- 24 ヤドカリの宿になる「新種のイソギンチャク」を日本で発見
- 25 オスのヤドカリを「メス化」する寄生フジツボ――そのメス化進行度を解明
- 26 【神技】接近してるのに「近づいてない」ように見せるコウイカの新カモフラージュ!
- 27 カブトガニの「青い血」が医療分野で重宝される理由とは?
- 28 海底ケーブルの電磁波でエビの赤ちゃんが「カナヅチ」になると判明!
- 29 世界各地でヤドカリが「プラごみを家」にする現象が起き始めている
- 30 引っ越しても一緒! ヤドカリの貝殻にくっつく新種イソギンチャク「カルシファー」
- 31 2021年の「最も驚いた動物ニュース」ベスト5!
- 32 廃タイヤが「ヤドカリ」を殺すトラップになっていた
- 33 イカは夕飯の「好物」のために昼食をセーブできると判明
- 34 チンパンジーもカニが好き!京大グループが初観察
- 35 入ってますよ!ヤドカリは貝殻を振動させて相手を追い払う
近いなかまの図鑑
同じ十脚目
参考文献
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ありがとうございます。編集部で確かめます。
表紙の写真: Nicolas de Camaret from São Paulo, Brazil(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons
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この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。











