他種のスポンジ・クラブとはケタ違いの毛深さ
新種のスポンジ・クラブは、西オーストラリア州の南部・オールバニ (Albany)の海岸で発見されました。
スポンジ・クラブは主に、オーストラリアの海岸一帯に分布しています。
これまでに40種以上のカイカムリ科が見つかっており、そのうちの40%は同地にだけ生息する固有種です。
新種の学名は「ラマルクドロミア・ビーグル(Lamarckdromia beagle)」と命名されました。
ラマルクドロミアは属名で、種小名のビーグルは、1836年にオールバニを訪れたチャールズ・ダーウィンの調査船ビーグル号にちなんで名付けられています。
L. ビーグルは今のところ、オールバニの浅瀬や海綿が多い埠頭付近でしか見つかっていません。
スポンジ・クラブの体表面には、細かい毛がびっしり生えており、その先端がフック状になっているため、海綿や藻類を取り付けられるようになっています。
L. ビーグルも最初から、このようなモフモフ姿で生まれるわけではなく、体型に合うように海綿や藻類を切り取って、体に貼り付け、一緒に成長させます。
それらが成長すると、保護用の帽子やブランケットのようになるのです。
L. ビーグルがまとうモフモフの体は、藻類が成長したものと見られます。
ちなみに、L. ビーグルの全裸姿は、このようにひどく寂しいものです。
L. ビーグルは全身をモフモフにする以外に、適当な海綿を切り取って頭部に乗せ、帽子のようにします。
その主目的は、タコや魚といった天敵から身を守るカモフラージュです。
確かにこの姿でジッとされると、天敵もまさかカニだとは思わないでしょう。
まさにカニ界のギリースーツと呼ぶべきものです。
また、西オーストラリア博物館の学芸員で、本研究主任のアンドリュー・ホージー(Andrew Hosie)氏によると「海綿は、カモフラージュの役割を果たすだけでなく、他の水中生物にとって有害なものも多い」という。
スポンジ・クラブの中には、毒を持つ藻類やイソギンチャクを身につけて、天敵避けにする種もいます。
まだ特定されていませんが、L. ビーグルのカモフラージュにも、そのような役割があるのかもしれません。
ホージー氏によると、L. ビーグルのカモフラージュは、他種のスポンジ・クラブに比べて、圧倒的に毛深いといいます。
「このグループのカニはすべてある程度毛深いのですが、L. ビーグルはケタ違いです。
全身にわたってモフモフで、また驚くほど柔らかく、温かみのある褐色をしています。
この種がなぜこんなにモフモフしているのか、明確な答えは出ていませんが、捕食者から胴体だけでなく、足までしっかり隠すためではないかと考えられています」