Point
■カニの脳容量は生物界の中でも非常に小さく、ハチの脳の10分の1ほどしかない
■しかし、新たな研究により、カニは迷路のルートを学習し、2週間にわたって覚えておくことができると判明
■訓練していないカニの迷路クリア時間は平均して39分だったのに対し、訓練したカニはすべて8分以内にクリアした
カニには、いわゆる人のような球体状の脳はありません。「カニミソ」も脳ミソではなく、実は内臓の一部です。
脳に当たる器官は口の近辺に位置しているのですが、そのサイズはハチの脳の10分の1ほどしかありません。
ですから、『猿カニ合戦』でも読まないかぎり、カニが賢いというイメージを抱くことはないでしょう。
ところが今回、スウォンジー大学(米)の研究により、カニは訓練次第で迷路のルートを学習できることが判明しました。それだけでなく、カニは、覚えたルートを2週間経っても忘れずに記憶し続けていたのです。
カニは予想以上に賢いのかもしれません。
研究の詳細は、10月23日付けで「Biology Letters」に掲載されています。
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2019.0407
カニは学習も記憶もできる
研究チームは、12匹の「ヨーロッパ・ミドリガニ(Carcinus maenas)」に対し、水槽の中に特設した迷路を完遂するよう訓練しました。
ゴールにたどり着くルートは1つしかなく、道中では5回の方向転換が必要です。また、行き止まりは3つ用意されています。
ゴール地点には、ご褒美としてカニの大好物であるムラサキイガイのすり身を置きました。
カニには、1週間に1度、迷路に挑戦してもらい、それを4週間続けました。
12匹のカニたちは皆、毎回の訓練ごとに道間違いの回数が減り、3週目のチャレンジで初めてミスなしで迷路をクリアすることに成功しています。
次に、4回の訓練を終え、カニが迷路のルートを覚えた後、2週間を空けて記憶力のテストを実施しました。
比較として、訓練を受けていない別のカニ12匹も迷路に挑戦しています。すると、訓練を受けていないグループは、ゴール到着までに平均して39分かかり、1時間以内にたどり着けたのは12匹中7匹でした。
対して、訓練を受けた精鋭12匹にチャレンジしてもらうと、全員8分以内で迷路をクリアしたのです。
研究主任のエドワード・ポープ氏は「カニは他の生物たちより脳容量が極めて小さいにも関わらず、これほど長く記憶を保持できるのは驚きだ」と話します。
今後、研究チームは、環境の変化(水温や酸性濃度)がカニの記憶力に与える影響をテストする予定です。きっと次の試練も難なくクリアしてくれるでしょう。