電磁波による「奇形」のせいでロブスターが「カナヅチ」に
研究チームはこれまで、洋上風力発電所のための海底送電網が、カニやロブスターといった商業的に重要な生き物に、どんな影響を与えているか調査してきました。
その中で判明したのが、先に述べた「カニの電気中毒」です。
海底ケーブルが「カニを誘惑している」と明らかにhttps://t.co/b2FBZCmLzJ
英ヘリオットワット大によると、風力発電のために敷設された電力ケーブルが、ヨーロッパイチョウガニの習性に悪影響を与えていると判明。電磁気がカニを惹きつけ、血液細胞に変化を起こし感染症にかかりやすくなっていたそう pic.twitter.com/OuZK5HO4q7
— ナゾロジー@科学ニュースメディア (@NazologyInfo) October 12, 2021
今回は、セント・アブス海洋ステーションにある実験用水槽を用い、4000個以上のカニとロブスターの卵を、海底ケーブルから発されるのと同レベルの電磁波にさらしました。
それと並行して、電磁波をまったく照射しないカニとロブスターの卵(比較群)も用意しています。
この実験では、卵から幼生になるまでの成長を数カ月にわたって追跡し、最終的には遊泳テストも行いました。
その結果、電磁波にさらされたカニとロブスターの幼生は、ともに比較群より小さくなっていたのですが、ロブスターの方がより強い悪影響を受けることがわかりました。
垂直方向の遊泳テストで、水槽の底から餌を得るために水面まで浮上できるかを調査した場合、電磁波を浴びたロブスターの赤ちゃんは、浴びなかった個体に比べ、3倍近くもテストに不合格になり、水面まで到達できなかったのです。
さらに、それらのロブスターは、奇形になるリスクも3倍高くなっていました。
最も多く見られた奇形は、体の全体的な縮小と、尾の部分の折れ曲がりです。
泳ぎが下手になっていたのは、これらが原因と見られます。
また、目の発達が乱れていたり、体がパンパンに腫れ上がる症状も確認されました。
一方、カニの赤ちゃんにも多少の縮小は見られましたが、遊泳に支障をきたすレベルにはありませんでした。
セント・アブス海洋ステーションのペトラ・ハーサニ(Petra Harsanyi)氏は「カニの縮小は、ロブスターのように、すぐに影響の出るものではなかったが、発育に問題があることを示している」と指摘。
「長期的な障害や死亡率を増加させる可能性があるため、時間をかけて追跡調査をしなければならない」と話しています。
奇形や縮小そのものが命にかかわることではないにしても、単純に泳ぎが下手になることで、天敵に捕食される可能性が増大するでしょう。
カニやロブスターは、商業的に価値のある生き物であるため、何らかの解決策を模索しなければなりません。
その一つとして、ヘリオット・ワット大学のアラステア・リンドン(Alastair Lyndon)氏は「海底ケーブルを地中に埋めて、カニやロブスターを電磁波から保護する」ことを提案します。
「この手法はコストがかかり、維持管理も難しいですが、すでに多くの海洋再生可能エネルギー開発で行われています。
今後は、この手法を積極的に取り入れて、水生生物を守る必要があるでしょう」
何らの手も打たないまま、海底ケーブルだけ無闇に増やしてしまうと、ロブスターの「溺れ死に」が大量発生するかもしれません。