偏光測定とハイパースペクトルイメージングの機能
最近はAIのサポートによって、カメラで撮影するだけでさまざまな情報を取得分析できるようになってきました。
ハイパースペクトルイメージング(イメージ分光)は可視光をさらに細かい帯域に分解できる技術で、これは映したものの化学組成を分析することができます。
偏光測定では、光の振動する方向を調べることで、映したものの角度や、つるつるしているのかざらざらしているのかといった表面の質感を調べることができます。
どれも面白い技術ですが、現在このような特殊な撮影を行うには、かなりかさばるカメラを使わなければなりません。
こうした光学センサーをより使い勝手の良い機材となるよう、スマートフォンにも収まるくらい小型化させるというのは、大きな技術的課題になっているのです。
しかし、実は人間には開発できていなくても、すでにこれらの機能を備えた小型の光学センサーが世の中には存在しています。
それが、寿司ネタにもされる甲殻類シャコの目です。
驚くべきことにシャコの目には16もの光受容体があり、紫外線まで見える他、円偏光を検出することができる唯一の既知の生物です。
この能力によって、シャコはそれぞれの目を独立して動かしても、片方の目だけで奥行きを認識することができます。
そこでノースカロライナ州立大学などの研究チームは、このシャコの目を参考にして新しい光学センサーを開発したのです。
このセンサーはSIMPOL(Stomatopod Inspired Multispectral and POLarizationsensitive)と名付けられています。Stomatopodaというのはシャコ目の学名です。まんま「シャコ目にインスパイアされた光学センサー」という名称になります。
現在スマートフォンに搭載されるカメラは、赤、緑、青を検出する3つのスペクトルセンサーしかありません。SIMPOLセンサーは、4つのスペクトルセンサーと、3つの偏光センサーを同時に備えています。
これはハイパースペクトル画像と偏光画像を同時に撮影できる小型センサーを作成できることを示しています。
SIMPOLは、通常の画像センサーよりも10倍狭いスペクトルの特徴を識別できる、と研究者は語っています。
現在のところ、このセンサーは概念実証の段階に過ぎませんが、研究者はモデリングシミュレーションを使って、最大15の空間的に登録されたスペクトルチャネルを検出できる光学センサーが開発できると確認しているといいます。
シャコがベースとなって研究者や技術者が使うような、高機能な光学センサーを搭載したスマートフォンもいずれ登場するのかもしれません。
そうなると、スマホだけで個人が科学捜査まがいのことも、できてしまうかもしれませんね。
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