アメリカザリガニの侵入域で水生昆虫が激減!
もともと日本には、北海道や東北に固有のニホンザリガニ(Cambaroides japonicus)という在来種がいます。
当時、「ザリガニ」と言えば、ニホンザリガニのことを指していました。
しかし、アメリカザリガニ(Procambarus clarkii )が移入・定着したことで、2種を呼び分けるように。徐々に、アメリカザリガニの方が幅を利かせ始め、昭和以降から「ザリガニ」と言えば、むしろこちらを指すようになりました。
その後も強い繁殖力で日本中に広がり、近年では淡水環境への悪影響が懸念され、環境省の生態系被害防止外来種となっています。
本種による水生昆虫への影響は、実験室レベルでは検証されているものの、野外ではまだ確認されていません。
そこで今回の研究では、水生昆虫が存在するエリアにて、アメリカザリガニが侵入した水域と未侵入の水域とで、水生昆虫の種数や個体数を比較。
合計で52種、2721個体が記録されました。
その結果、アメリカザリガニが侵入した水域では、水生昆虫が激減していることが判明したのです。
未侵入域では50種、2405個体が確認されたのに対し、侵入域では23種、316個体にとどまりました。
とくに、水草をエサにしたり、水底を産卵場所として利用する種に大幅な減少が見られました。
代表的なのは、ゲンゴロウやミズムシ、ガムシ、タガメ、ミズカマキリ、ヤゴ(トンボの幼虫)などです。
対照的に、水面付近を拠点とするアメンボやマツモムシは、ほとんど影響を受けていませんでした。
これは、水底付近はアメリカザリガニの魔の手が届くのに対し、水面には届かないことが理由です。
この結果から、アメリカザリガニが影響を与える水生昆虫は、水草をエサとする種、産卵床を利用する種、水底に留まって身を隠す種であることが示されました。
こうした悪影響を防ぐには、アメリカザリガニの侵入を防止すること、初期段階で駆除すること、侵入域での繁殖を抑えることが不可欠です。
しかし、これまでの繁殖力を鑑みると、アメリカザリガニの勢いを止めることはかなり厳しいでしょう。
もしかしたら水生昆虫たちは今後、赤い殺し屋の魔の手を逃れるため、水面や陸地での生活に適応し始めるかもしれません。