クマムシは、体長0.05〜0.5mmほどの小さな動物。乾くと「乾眠」という状態になり、−272℃の低温や人の約1000倍の放射線、宇宙空間にも耐えることから「最強の生き物」と呼ばれます。日本でも道ばたのコケから見つかります。
図鑑データ
- 分類
- 動物界 › 緩歩動物門
- 学名
- Tardigrada
- 英名
- water bear(ウォーターベア)、tardigrade
- 種の数
- 約1,500種
- 大きさ
- 0.05〜0.5mm(大きいもので1mmあまり)
- すみか
- コケ・地衣類、池や川、海(浅瀬〜深海)。南極から熱帯まで
- 日本では
- 道ばたや石垣のコケにもいる
- 食べもの
- 植物や動物の細胞の汁(口針で吸う)
- 寿命
- 数か月〜半年ほど(活動しているとき)
- 増え方
- 卵。メスだけで増える種もいる
- 初めての記録
- 1773年(ゲーツェ)
クマムシとは
クマムシは「緩歩動物(かんぽどうぶつ)」というなかまにまとめられる、とても小さな動物です。4対8本の短い脚でゆっくり歩くことから「緩歩」、ずんぐりした姿がクマに似ていることから「クマムシ」と呼ばれます。
「ムシ」とつきますが、昆虫ではありません。昆虫やエビ・カニなどの節足動物に近い、独立した動物のグループで、これまでに約1,500種が見つかっています。
大きさと体のつくり
体長は多くが0.05〜0.5mmほどで、大きなものでも1mmを少し超えるくらいです。肉眼ではほとんど見えず、顕微鏡でようやく姿が分かります。

- 体:頭と4つの胴の節からなり、表面はクチクラという薄い膜でおおわれています。大きくなるときは脱皮します。
- 脚:関節のない短い脚が4対8本。先にかぎ爪や吸盤のようなものがあり、コケなどにしがみつきます。
- 口:口の中に1対の針(口針)があり、これを刺して食べものの汁を吸います。
- 脳と目:小さな脳と神経があり、目のような点(眼点)をもつ種もいます。
- 呼吸:肺やえら、心臓や血管はなく、体の表面から直接酸素を取り入れます。
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どこにいる? 日本にもいる?
クマムシは、熱帯から南極・北極、ヒマラヤのような高い山から深い海の底、温泉の中まで、地球上のほとんどの場所で見つかっています。陸にすむクマムシの多くは、コケや地衣類のすき間にたまったわずかな水の中で暮らしています。海の砂のすき間にすむなかまもいます。
日本にもふつうにいて、道ばたや石垣、屋根の上のコケからも見つかります。2021年には、山形県の月山の雪の上から新種が見つかったと、千葉大学のチームが発表しました。

クマムシの探し方
乾いたコケをひとつまみ取って、皿に入れた水にひたします。数時間から一晩ほど置いてからコケをしぼり、その水を実体顕微鏡や倍率の高いルーペで探すと、ゆっくり動くクマムシが見つかることがあります。

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何を食べる?
口の中の針(口針)を植物や動物の細胞に刺して、中の汁を吸って食べます。コケや藻の細胞の汁を吸うものが多い一方で、線虫やワムシなど、ほかの小さな動物を食べる肉食のなかまもいます。

「最強の生き物」と呼ばれる理由
クマムシが「最強」と呼ばれるのは、乾くと「乾眠(かんみん)」という特別な状態になれるからです。まわりがゆっくり乾いていくと、脚と頭を引っこめて「樽(たる)」と呼ばれる形に縮み、体の水分をふだんの85%ほどから3%以下まで減らして、代謝をほとんど止めます。

乾眠しているクマムシは、実験で次のような環境にも耐えたことが確かめられています。
- 低温:−272℃(ほぼ絶対零度)
- 高温:100℃をこえる熱(短い時間なら)
- 圧力:真空から7万5000気圧まで
- 放射線:人の半数が死ぬ量のおよそ1000倍
- 宇宙空間:2007年、人工衛星に載せて10日間さらしたあとも生き返った個体がいた
- 衝撃:秒速800mをこえるスピードでぶつけても生き残った
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ただし、クマムシは何をしても死なないわけではありません。乾眠に入るにはゆっくり乾く必要があり、急に乾かされると死んでしまいます。また、活動しているときは、ほかの小さな動物と同じくらいの強さしかありません。極限の環境には「耐えられる」だけで、そこで暮らしていけるわけではないのです。
強さのしくみ
日本で見つかったヨコヅナクマムシからは、DNAを放射線などから守る「Dsup(ディーサップ)」というタンパク質が見つかっています(2016年、東京大学などの研究)。また、乾くときにトレハロースという糖をためて体を守る生き物は多いのですが、クマムシはそれにあまり頼らず、乾くとゲルのように固まる特別なタンパク質などで細胞を守っていると考えられています。
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寿命と増え方
活動している状態での寿命は、数か月から半年ほどとされています(種によって違います)。乾眠や凍結のあいだは時間が止まったようになり、凍らせている期間は寿命に数えられないことが、2022年の研究で確かめられています。
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多くのクマムシは卵で増えます。メスとオスがいる種のほか、メスだけで増える種(単為生殖)も知られています。脱皮した古い殻の中に卵を産む種もいます。幼生の時期はなく、卵からかえった子どもは、親と同じ形のまま脱皮をくり返して大きくなります。

名前の由来と発見の歴史
クマムシが初めて記録されたのは1773年。ドイツのゲーツェが「小さな水のクマ」と名づけました。3年後の1776年には、イタリアのスパランツァーニが「ゆっくり歩くもの」という意味の名前をつけ、これが学名 Tardigrada の元になっています。英語では water bear(水のクマ)や moss piglet(コケの子ブタ)とも呼ばれます。
日本では、長生きに見えることから「チョウメイムシ(長命虫)」と呼ばれたこともありました。また1937年には、長崎県の雲仙温泉で見つかったとして「オンセンクマムシ」が記載されましたが、標本が残っておらず、その後も見つかっていないため、本当にいたのかは今もナゾのままです。

化石では、約5億年前のカンブリア紀の地層からなかまの化石が見つかっているほか、琥珀に閉じこめられた化石も見つかっています。
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よくある疑問
- クマムシは本当に死なないの?
- いいえ。乾眠しているときはとても強いですが、ずっと極限の環境にいると死ぬ確率は上がります。活動しているときはほかの小さな動物と同じくらいの強さで、急に乾かされたり、つぶされたりすると死んでしまいます。
- クマムシは肉眼で見える?
- ほとんどが0.5mmより小さいため、肉眼ではまず見えません。実体顕微鏡や倍率の高いルーペを使うと、ゆっくり動く姿を見られます。
- 日本のどこにいる?
- 道ばたや石垣、屋根の上のコケなど、身近な場所にいます。乾いたコケを水にひたし、その水を顕微鏡で探すと見つかることがあります。
- 乾眠と冬眠はどうちがう?
- 冬眠は体の働きをゆっくりにして眠ることですが、乾眠は体の水分をほとんど抜いて、代謝そのものをほぼ止めた状態です。乾眠中は、食べることも呼吸することもほとんどしません。
- 月にクマムシがいるって本当?
- 2019年、イスラエルの月探査機「ベレシート」が、乾眠したクマムシを載せたまま月に墜落しました。その後の実験から、墜落の衝撃で生き残った可能性は低いと考えられています。月面には生き返るための水もありません。
ナゾロジーで読む28本
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参考文献
- Jönsson KI ほか (2008) Tardigrades survive exposure to space in low Earth orbit. Current Biology
- Horikawa DD ほか (2006) Radiation tolerance in the tardigrade Milnesium tardigradum. International Journal of Radiation Biology
- Traspas A ほか (2021) Tardigrade Survival Limits in High-Speed Impacts—Implications for Panspermia and Collection of Samples from Plumes Emitted by Ice Worlds. Astrobiology
- Hashimoto T ほか (2016) Extremotolerant tardigrade genome and improved radiotolerance of human cultured cells by tardigrade-unique protein. Nature Communications
- Boothby TC ほか (2017) Tardigrades Use Intrinsically Disordered Proteins to Survive Desiccation. Molecular Cell
- Yagi-Utsumi M ほか (2021) Desiccation-induced fibrous condensation of CAHS protein from an anhydrobiotic tardigrade. Scientific Reports
- Sieger J ほか (2022) Reduced ageing in the frozen state in the tardigrade Milnesium inceptum (Eutardigrada: Apochela). Journal of Zoology
- Mapalo MA ほか (2021) A tardigrade in Dominican amber. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
- Wikipedia「クマムシ」(日本語版)
- Wikipedia「Tardigrade」(英語版)
- Wikidata「Tardigrada」(Q5194)
表紙の写真: Thomas Shahan(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons
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この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。












