生命活動を一時停止できる「クリプトビオシス」とは?
今回、線虫に見られた休眠は「クリプトビオシス(cryptobiosis:乾眠)」と呼ばれる代謝活動の停止現象です。
現在のところ、クリプトビオシスができる生物は線虫の他にクマムシやワムシなど、わずかしか知られていません。
彼らは水資源がないといった過酷な環境に直面すると、全身の水分を抜いて乾燥状態に入り、生命活動を全面的に一時停止させます。
こうなると例えばクマムシでは、100度の高温からほぼ絶対零度の極低温、空気のない宇宙空間や大量の放射線、あるいは銃弾の中に詰め込んでの射出にも耐えられるのです。
全身が脱水してしまうと普通の生物なら即お陀仏ですが、彼らは水を加えるだけで元気な状態に戻ることができます。
現生する生物を使った科学的実験による休眠〜復活の最長記録は、クマムシで30年、線虫で39年となっていました。
一方で、今回のように永久凍土から見つかった生物の解凍では、より長い記録が残されています。
これまでの最高記録では、2018年に同じくシベリアで見つかった線虫(Plectus属)が約4万2000年間の休眠から復活していました。
しかし今回の発見はそれをさらに数千年ほど上回る結果となっています。