最強生物クマムシは「人間の致死量の1000倍の放射線」を浴びても生き延びる
クマムシ(学名:Tardigrade)とは、緩歩動物門に属する生物の総称であり、肉眼では確認しにくいほど微小(体長50μmから1.7mm)な動物です。
海洋・陸水・陸上のありとあらゆる環境に生息することで知られており、1000種以上が確認されています。
そして、このクマムシは、ほとんどの生物が耐えられない過酷な環境でも生き延びる「最強生物」として有名です。
例えば、絶対零度に近い-272℃から水の沸点を上回る150℃までの温度でも生き延びることができます。
また宇宙空間で10日間生き延び、マリアナ海溝の底の1000気圧にも耐えることが可能です。
さらに、ドイツのシュトゥットガルト大学(University of Stuttgart)が2022年に行った研究では、クマムシの凍結と解凍を繰り返した実験により、凍結中には寿命が消費されないことも明らかになりました。
加えて、最強生物であるクマムシは、大量の放射線を浴びても生き延びることが可能であり、5000~6200グレイ(Gy)の放射線レベルに耐性があると言われています。
人間の場合、全身に1グレイ以上の放射線を一度に受けると、様々な臓器・組織に障害が生じるとされます。
その値が7グレイにもなると、ほとんどの人間は死亡してしまうと言われています。
放射線は細胞のDNAを傷つけます。DNAは細胞を作り出す設計図です。そのためDNAが破壊されると、細胞を複製できなくなってしまうのです。
このため、放射線を浴びた直後は身体に異変がなくても、代謝する中で身体に次々と異常が起きていくのです。
少量の放射線であれば、DNAの傷もすぐに修復されますが、大量の放射線を浴びるとDNAの破損修復が追いつかず、臓器障害やがんの原因となり、最悪代謝による細胞の入れ替えができなくなり死に至ります。
であるにも関わらずクマムシは、人間の致死量の約1000倍の放射線を浴びても生き延びることができます。
では、なぜクマムシは人間と同じ生物でありながら、放射線に対してこれほどまでに高い耐性を持つのでしょうか。