氷漬けのクマムシは「寿命の灯火」を消費しているのか?
Googleが開発した対話型人工知能「LaMDA」によれば、優れた能力は「祝福」であると同時に「呪い」でもあるそうです。
クマムシに対する無茶な生物実験の歴史は長く、古くは1775年には既に乾燥実験が行われていたことが知られています。
この歴史的実験では、爪先で潰すとパラパラになるほど乾燥したクマムシに水を与えると、蘇って再び元のように歩きはじめることが報告されています。
また近年においてもクマムシに対する過酷な生物実験が繰り返され、
絶対零度から水の沸点100℃を超える温度に耐え、
宇宙空間の真空を生き延び、
遺伝子に電気シールドを備えることで、
大半の生命が死に絶える高レベル放射線を克服し、
銃を用いた発射実験でも生き残り、
「量子もつれ」状態に移行させることも可能
であることが判明しました。
クマムシの優れた耐久性能は「生物はどこまで耐えられるのか?」という究極の質問の答えを得るため繰り返し調査され、数々の貴重な科学的知見が得られてきました。
しかし、まだ全ての秘密が暴かれたわけではありません。
たとえば2016年に行われた研究では、1983年に南極大陸で採取され30年以上凍っていたクマムシを解凍すると、蘇って再び餌を食べ始めたことが報告されています。
通常の生活を送っているクマムシの寿命はせいぜい2,3カ月、長くても半年程度しかありませんが、凍り付くことで60~180倍も寿命が延びたことになります。
しかしここで大きな問題が立ちはだかります。
氷漬けにされることでクマムシの寿命が延長されたのは間違いありません。
しかしそれは「老化が極めてゆっくり進んでいた」のか、それとも「完全に停止していた」のか、どちらなのでしょうか?
どちらも大して違わないように思えますが、重要な差となります。
老化がゆっくり進んでいた場合にはやがて期限切れが訪れ、クマムシは凍ったまま寿命を迎えてしまいます。
しかし老化が完全に停止していた場合、クマムシは凍っている限り永遠に死なない可能性があり、何万年・何億年という極超長期に及ぶ恒星間移動、銀河間移動などにも耐えることができるでしょう。
(※NASAでは比較的短い時間でクマムシを隣の星系に送るスターライトプロジェクトが存在します)
そこで今回、シュトゥットガルト大学の研究者たちは、氷漬けにされている間にクマムシの寿命が消費されているかどうかを確かめる過酷な実験を行うことにしました。