宇宙空間で生きられるヒミツを解明する計画
クマムシは、体長1ミリほどの小さな生き物で、顕微鏡で見るとクマのように丸々していることから、この名前(英名:Water Bear)で親しまれています。
彼らはよく知られているように、厳しい環境にさらされると体から水分を抜いて「乾眠」という状態に入ります。
こうなると、高気圧、低酸素、放射線、真空など、あらゆる環境に耐えられるのです。
この能力のおかげで、クマムシはISSでの研究に有用なモデル生物となっています。
今回の打ち上げ実験の目的は、微小重力下にあるクマムシを遺伝子レベルで調べ、そのストレスフルな環境への適応を可能にしているDNAを特定することです。
ワイオミング大学・分子生物学助教授のトーマス・ブースビー氏は「クマムシは、無酸素や真空状態で何週間も生き残り、微小重力下で繁殖できることが分かっています。
その秘密を解明し、人体に活かすことで、宇宙に長期滞在しなければならないクルーたちの健康面を改善できる」と話します。
一方、今回の補給ミッションでは、ダンゴイカ(Euprymna scolopes)の赤ちゃんもISSに持ち込まれます。
ダンゴイカの幼生は体長3ミリほどで、体内に特殊な発光器官を備えており、その能力は生物発光性バクテリアによって与えられています。
本研究では、ダンゴイカとバクテリアの共生関係を調べることで、宿主に有益な微生物が宇宙空間でどう作用するかを調べる計画です。
フロリダ大学・微生物学者のジェイミー・フォスター氏は、声明の中で「私たちを含む動物の大半は、消化器系と免疫系を健康に維持するために微生物と共生関係を結んでいます。
しかしながら、地上では有益なこの相互作用を、宇宙飛行がいかに変化させるかは十分に理解されていない」と言います。
そこで研究チームは、ISS上で両者の共生関係を追うことで、イカが宇宙空間に適応するために、どの遺伝子スイッチをオンにし、どれをオフにしているかを特定しようという考えです。
フォスター氏は「これが分かれば、長い宇宙滞在の間、私たちの腸や免疫系に共生するマイクロバイオーム(微生物叢)を健康に保つ方法が考案されるかもしれない」と話しています。
こうした実験は、異常な環境適応能力を持つクマムシとイカだからこそ為せるワザです。
打ち上げはもう来週に迫っていますが、私たちは地上からイカとクマムシの健闘を祈ることにしましょう。