弾丸のスピードで発射されても死なないクマムシ
微小な無脊椎動物である「クマムシ」は世界に約1200種が知られており、道端のコケや池辺、高山や深海、南極など、水分のある所ならどこにでも住んでいます。
彼らの耐久力を特筆すべきものにしているのは「乾眠」という不死身モードです。
これは周囲から水分がなくなると、ゆっくりと体を乾燥させて代謝をほとんど停止したスリープ状態を指します。
こうなるとクマムシは生物界ナンバーワンの耐久力を発揮し、煮沸や氷点下、放射線、宇宙空間など、あらゆる環境に耐えられるのです。
2021年の研究では、弾丸より速いスピードでクマムシを発射しても死なないことも証明されました。
また乾眠したクマムシは水をかけることで、すぐ元通りになります。
過去には博物館に乾眠状態で130年間保管されていたクマムシが復活した例があるほどです。
クマムシを「遺伝子改変」する技術はまだない?
クマムシの耐久力を調べた研究は無数にあり、当サイトでも数多くのクマムシニュースを取り上げてきました。
しかし一方で、クマムシのトンデモ能力がどうやって発揮されているかを知るには、その能力に関わる個々の遺伝子を探り当てて、機能をピンポイントで調べる必要があります。
これまでの研究で、クマムシにおける多数の耐性遺伝子が見つかっているものの、それらが実際にクマムシの体内でどのように働き、どれほど耐久力に寄与しているかはわかっていません。
それを明らかにするには機能を調べたい遺伝子をピンポイントで破壊したり、逆に特定の遺伝子を外から導入する「遺伝子改変」の技術が必須なのです。
例えば、Aという遺伝子を壊して高温に耐えられなくなったら、この遺伝子Aが高温耐性の機能を持つことがわかります。
ところが遺伝子改変クマムシの作製に成功した前例はなく、そうした技術の開発は長年の課題となっていました。
しかし東京大学の研究チームは今回ついに、その大きな壁を突破することに成功したのです。