Point
■極限環境におけるクマムシの高い生存能力を支えるタンパク質Dsupの働きのメカニズムが解明
■Dsupが細胞内のDNAとタンパク質の複合体クロマチンに結びつき、ヒドロキシルラジカルからDNAを保護する雲を形成する
クマムシは8本足を持つぷにぷにのゴム人形のような特徴的ルックスから、英語では“water bears”(海のクマ)や“moss piglets”(コケの子豚)といった愛称で呼ばれています。
ただ、クマムシのユニークさはその外見だけに留まりません。体長0.1〜1ミリメートルほどのこの小型無脊椎動物は、厳しい環境の中を生き抜くスーパーパワーを備えた極限環境生物なのです。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが、クマムシが極限環境の中で身を守る仕組みをこのほど明らかにしました。論文は、10月1日付けで雑誌「eLife」に掲載されました。
https://elifesciences.org/articles/47682
極寒にも放射線にも耐える強靭さ
クマムシは世界各地の山地や深海、そして南極の水環境に生息しています。その驚くべきタフさは、マイナス200という極寒の温度や、危険な化学物質にさらされようと決して揺らがないことが、数多くの研究で示されています。
2007年には、休眠状態のクマムシが欧州宇宙機関 (ESA) によって宇宙に打ち上げられましたが、真空状態で大量の放射線が降り注ぐ環境に耐え、地球に生還しました。
また、今年2月に打ち上げられたイスラエルの民間プロジェクトによる月面探査気Beresheetの積荷の中にも、数千匹のクマムシが含まれていました。残念ながら着陸は失敗に終わりましたが、この強靭さですから、クラッシュ時の爆発を生き抜いた個体が1匹くらいは残っていても不思議ではありません。