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Credit:Hans Boehringer et al . arXiv (2025)
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宇宙最大の超構造体を発見!

2025.02.11 17:00:46 Tuesday

大きいだけでなく重いです。

ドイツのマックス・プランク研究所(MPI)で行われた研究により、天文学者たちはこれまでに知られていた中で最大の宇宙超構造体「キープ(Quipu)」を発見しました。

キープは、地球から約130~250メガパーセクの範囲に存在し、その全長は約428メガパーセク、すなわち約14億光年にも及ぶとされています。

この途方もないフィラメント状の構造は、約70もの銀河団や超銀河団が連なって形成され、宇宙全体の銀河や物質の大きな割合を占める重要な存在です。

研究チームは、X線を放射する銀河団のデータを詳細に分析し、「フレンズ・オブ・フレンズ」アルゴリズムを用いて銀河団同士のつながりを調査することで、キープのような巨大なネットワークを明らかにしました。

その結果、キープをはじめとした5個の超構造体は観察範囲にある銀河団全体の約45%、銀河の約30%、そして全物質の約25%が含まれると推定され、宇宙の体積の約13%を占めるとされています。

(※ここでいう「物質」は普通の物質と暗黒物質の両方を含んでいます)

この発見は、既存の巨大構造(たとえばスローン万里の長城など)と比較しても圧倒的なスケールを誇り、宇宙がどのように構築され、進化してきたのかという私たちの理解に新たな視点を提供するものです。

研究内容の詳細はプレプリントサーバーである『arXiv』にて公開されています。

Unveiling the largest structures in the nearby Universe: Discovery of the Quipu superstructure https://doi.org/10.48550/arXiv.2501.19236

全物質の25%を含む超構造体

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この図(FIG4)は銀河団の分布を示しています。図中の実線や空円は、各銀河団の位置を表しており、その中で特に重要な超構造体に属する銀河団が色分けされています。 具体的には、赤色は「キープ」超構造体、青色は「シャプレー」超構造体、緑色は「サーペンス・コロナ・ボレアリス」超構造体、紫色は「ヘラクレス」超構造体、そしてベージュ色は「スカルプター・ペガサス」超構造体を示しています。 このように研究により異なる超構造体がどのように銀河団や銀河の全体的な分布の中で際立っているか、また観測上の制約がどこに存在するかを一目で理解できるようになりました。/Credit:Hans Boehringer et al . arXiv (2025)

私たちが夜空に輝く星々や銀河を見ると、それぞれが孤立した存在のように感じられるかもしれません。

しかし、実際の宇宙は、銀河や銀河団、さらには超銀河団が互いに重力で結びついて、まるで巨大なネットワーク(コズミックウェブ)のような構造を形成しています。

宇宙の大規模構造を理解することは、宇宙がどのように形成され、進化してきたのか、そしてダークマターやダークエネルギーといった謎の存在がどのように影響しているのかを探るために非常に重要です。

そこで今回、ドイツのマックスプランク研究所をはじめとした研究者たちは、こうした大規模構造の全貌を明らかにするため、X線を放射する銀河団のデータを駆使して分析を行いました。

X線は、銀河団内部に存在する非常に高温のガスが発するため、銀河団の質量や存在位置を正確に把握する手段として優れています。

また、ほぼ全空域をカバーするCLASSIXサーベイというプロジェクトのデータも活用され、宇宙全体の銀河団分布を網羅的に調査することが可能になりました。

研究者たちは、銀河団(たくさんの銀河が重力で集まったグループ)がどのようにして互いに「つながっている」のかを調べるために、「フレンズ・オブ・フレンズ」アルゴリズムという手法を使いました。

このアルゴリズムは、ある銀河団の周囲に「近くにいる仲間」(物理的な距離で一定以内にある銀河団)があれば、それらを順番に結びつけていく方法です。

簡単に言えば、「もしAとBが近くにあって、BとCも近ければ、A、B、Cは同じ大きなグループに入る」という考え方です。

これにより、個々の銀河団が実は巨大なネットワーク、すなわち「超構造体」としてまとまっていることが見えてきました。

研究では主だった5種類の超構造体について調べられておりそれは以下の通りになっています

  • キプ(Quipu)
    大きさ(全長):約428メガパーセク(約14億光年)
    推定質量:約2.4 × 10^17 太陽質量
  • シャプレー(Shapley)
    大きさ(全長):約90メガパーセク
    推定質量:約0.8 × 10^17 太陽質量
  • サーペンス・コロナ・ボレアリス(Serpens-Corona Borealis)
    大きさ(全長):約234メガパーセク
    推定質量:約1.8 × 10^17 太陽質量
  • ヘラクレス(Hercules)
    大きさ(全長):約154メガパーセク
    推定質量:約0.6 × 10^17 太陽質量
  • スカルプター・ペガサス(Sculptor-Pegasus)
    大きさ(全長):約216メガパーセク
    推定質量:約1.3 × 10^17 太陽質量

またこれら5個の超構造体だけでも、観察範囲の全物質の25%と体積の13%が含まれていることが示されました。

そしてこの中でも最も巨大な超構造体キープの全長は428メガパーセク、すなわち約14億光年にも及ぶことが明らかになりました。

また、キープは、主要な長い軸に沿って、いくつかの細い枝(サブフィラメント)が左右に伸びるという、複雑かつ美しいネットワーク状のパターンを示していました。

この独特な外観から、研究チームは最も大きな超構造体をインカ帝国で用いられた記録装置「キープ(Quipu)」と名付けました。

インカ文明では、結び目や色、糸の長さを利用して膨大な情報を記録しており、その見た目は、太い主たる糸に複数の細い結び目付きの糸が連なる様子に似ています。

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