ヘルメットを被せるだけでサイボーグ化!光で昆虫を操る新技術を開発
昆虫は地球上のすべての動物種の約50%を占める多様な存在であり、その生存能力は圧倒的です。
極限環境に適応し、極めて狭い空間も自由自在に移動できる昆虫の優れた感覚・運動機能は、古くからロボット開発のインスピレーション源となってきました。
そして近年では、昆虫そのものをサイボーグ化することで、人間の役に立てる研究も進められています。
しかし、これまでの「サイボーグ昆虫」研究では、電気刺激によって神経や筋肉に直接信号を送り、強制的に動きを制御する方法が主流でした。
この手法は確かに効果的でしたが、電極の埋め込みによる侵襲性、繰り返し刺激による習慣化(反応の低下)、高い電力消費といった大きな課題がありました。

そこで大阪大学の研究チームは発想を転換。
マダガスカルゴキブリ(Gromphadorhina portentosa)の「負の走光性」に着目しました。
このゴキブリは紫外線を嫌い、本能的に避ける性質があります。
研究チームはこの習性を利用し、昆虫の視覚系を刺激して行動を制御する新たなアプローチを開発しました。
サイボーグ化のために使用されたのは、超軽量3Dプリント製の「UVヘルメット」です。

軽量のフレームに左右の複眼をターゲットにしたUV LEDを配置したこのヘルメットは、紫外線によって複眼を刺激。これにより方向制御を実現しました。
さらにゴキブリの背中にはワイヤレスバックパックを搭載。
慣性計測センサーや距離センサーを組み合わせることで、自然な行動を維持しながら、高精度な制御を可能にしました。
外部からの直接電気刺激ではなく、「左複眼に紫外線→右回転」「右複眼に紫外線→左回転」という自然な反応を誘導する画期的なシステムが完成したのです。