“仕方ないセックス”は敵か味方か

「望まない同意(性的コンプライアンス)」とは、自分自身はその時あまり欲していないにもかかわらず、パートナーとの性的行為に同意することを指します。
強制されたわけではなく基本的には自発的な行動ですが、義務感や罪悪感や相手を失望させたくない気持ちなど、微妙なプレッシャーが背景にある場合もあります。
パートナーを満足させたい、関係を維持したい、ケンカを避けたいといった思いからこのような同意がなされることが多いと報告されています。
より簡単に言えば相手の希望に沿うための「仕方ないセックス」や「受け身のセックス」あるいはネットスラング的に言えば「義務ックス」とも言えるでしょう。
(※望んでいるわけではないけれどもセックス自体には同意するという意味で以降では「望まない同意」と表現します)
実際、過去の研究では半数からほぼ全員が人生で一度は「望まない同意」の経験があると回答しており、長期的な関係でも一時的な関係でも比較的よく見られる行動です。
では、この「望まない性交への同意」は人々の幸福にどんな影響を与えるのでしょうか?
実は専門家の間でも見解は分かれていました。
性的欲求の不一致(いわゆるセックスにおける食い違い)に対処するためのひとつの有効な手段になり得るとの指摘がある一方、実は隠れた強要の結果であり関係に悪影響を及ぼす恐れもあると警鐘を鳴らす声もありました。
こうした賛否両論がある中で、この行動がもたらす利点とリスク(コスト)をより包括的に理解する必要性が高まっていたのです。
フィンランドのオーボ・アカデミー大学のSabina Nickull(サビーナ・ニックル)氏ら研究チームは、「望まない同意」の感じられるポジティブな結果とネガティブな結果のそれぞれについて、どういった要因が関係しているのかを明らかにしようと試みました。