底引き網漁が与える壊滅的なダメージ
底引き網漁は、巨大な網を金属製のビームやチェーンで海底に押し付けながら曳航し、魚介類を根こそぎすくい上げる漁法です。
この過程では、漁の対象としていないサンゴ礁や底生生物までもが破壊されます。
底引き網漁が海にもたらしている被害は宇宙からも確認できるほどです。
漁船が網を海底に下ろし、海底を引きずるたびに、大量の堆積物が巻き上げられ、破壊の痕跡となって衛星写真で捉えられます。
一部の堆積物の跡は数十キロメートルにも及び、それぞれの生態系が回復するには数年もの歳月がかかります。
2017年の研究では、底引き網漁により最大41%の海底生物が失われ、その回復には6年以上かかることが報告されました(PNAS, 2017)。
毎年、天然の魚介類の約4分の1は底引き網漁によって漁獲されており、破壊の規模の大きさを物語っています。
しかし衛星画像から見えるもの以上に衝撃的なのは、網に巻き込まれる直前の生き物たちの最後の瞬間です。
「海の表面からは、こんなことが起きているとは思いもしないでしょう」と、アッテンボロー氏は映像の中で語ります。
今回、底引き網漁が海洋生態系に与える破壊的なダメージをリアルタイムで初めて撮影した映像がこちらです。
※ 視聴の際は音量にご注意ください。
海底の堆積物が激しく巻き上げられ、小魚たちが必死に網から逃げている様子が伺えます。
またアッテンボロー氏はこう話します。
「しかも底引き網漁は多くの場合、たった1種類の魚を狙っているだけです。他の生き物はほとんどが捨てられます。
トロール船の漁獲物の4分の3以上が廃棄されることもあります。これほど非効率で無駄の多い漁法は想像しにくいでしょう」
とはいえ「希望もある」と氏は話します。
「海には驚くべき再生力があり、私たちはただその機会を与えさえすればよいのです」