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Credit: Gino Caspari., Asian Archaeology(2025)
history archeology

3900年前の砂漠の民による「ボート葬」を発見!なぜ舟で埋葬したのか?

2025.06.16 23:00:51 Monday

海の民が小舟に亡くなった人を寝かせて埋葬するのはわかります。

しかし砂漠の民がこの葬儀をしているとなると、どう考えればよいでしょうか?

独マックス・プランク研究所(MPI)はこのほど、中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区にある砂漠の遺跡で、舟の形をした棺に埋葬された故人の遺体を発見しました。

年代は紀元前1400〜1900年頃のものです。

砂漠に住む古代人がなぜ舟で故人を埋葬したのでしょうか?

研究の詳細は2025年5月15日付で学術誌『Asian Archaeology』に掲載されています。

Mysterious boat burial practices on the desert’s edge: Study sheds light on ancient Xiaohe funerary rites https://phys.org/news/2025-06-mysterious-boat-burial-edge-ancient.html
Reflections on water: funerary practice and symbolism at the Bronze Age site of Xiaohe https://doi.org/10.1007/s41826-025-00105-2

なぜ砂漠の民は「舟」に埋葬したのか?

物語の舞台となるのは、新疆(しんきょう)ウイグル自治区にある「小河墓地」という遺跡です。

小河墓地は、1934年にスウェーデンの考古学者によって初めて発見されました。

その後2000年代に入って本格的な発掘が行われ、これまでに約180基の墓が確認されています。

小河墓地の遺物は非常に保存状態がよく、有機物(木材、布、皮など)までがそのまま残っていることで世界的に注目を集めてきました。

この墓地の最大の特徴は、舟型の木棺を使っている点です。

それもただの舟ではありません。

棺は逆さまにして砂地に埋められ、櫂(かい)や杭を模したような柱が頭部から天に向かって突き出しています。

一部の棺にはウシの皮が何重にも巻かれており、まるで「水を渡るための道具」として準備されたかのようです。

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発見された埋葬形態の図解/ Credit: Gino Caspari., Asian Archaeology(2025)

なぜこんな形をしているのでしょうか?

研究者は「小河墓地の舟型棺は単なる形状の問題ではなく、死者を来世へ送り出すための象徴的な舟である」と指摘します。

この感想した砂漠には昔からオアシス地帯があり、夏に氷雪がとけた水が川となって流れ、湿潤な環境を一時的に生み出すことで知られていました。

この地域に暮らしていた人々にとって、水は命を支えるものであると同時に、死後の世界への通路でもあったのかもしれません。

舟型の棺、上向きの櫂や杭、ウシの皮での防水――それらは「魂を運ぶための舟」を演出し、死者がこの世から来世へ旅立つ準備を整えていたのです。

次ページ逆さまの埋葬が示す「鏡の中の世界」

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