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Credit: canva
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ウミウシが「盗んだ葉緑体」を使いこなせる秘密を解明!

2025.06.26 17:00:27 Thursday

他の生き物から「特殊能力」を盗んで使う。

そんなSF映画に出てくるような生物が海に実在します。

それが「レタスウミウシ(学名:Elysia crispata)」と呼ばれる海の生き物です。

まるで緑色のレタスの葉のような姿をしたこのウミウシは、食べた藻類から「葉緑体」を盗み取ります。

しかもただ飾っているだけではありません。

実際に葉緑体を使って光合成をし、自らの生命活動に役立てているのです。

しかし長年の謎がありました。

「盗んだ葉緑体を、どうやって体内で機能させているのか?」

この疑問に、米ハーバード大学(HU)の研究チームがついに答えを見つけました。

盗んだ葉緑体を動かし続ける秘密は、ウミウシの体内にある“未知の細胞小器官”にあったのです。

研究の詳細は2025年6月25日付で科学雑誌『Cell』に掲載されています。

Solar-Powered Thieves: New Study Uncovers Animal Organelle That Sustains Photosynthesis from Stolen Chloroplasts https://www.mcb.harvard.edu/department/news/solar-powered-thieves-new-study-uncovers-animal-organelle-that-sustains-photosynthesis-from-stolen-chloroplasts/ Sea Slugs Steal Body Parts From Prey to Gain Their Powers https://www.sciencealert.com/sea-slugs-steal-body-parts-from-prey-to-gain-their-powers
A host organelle integrates stolen chloroplasts for animal photosynthesis https://doi.org/10.1016/j.cell.2025.06.003

藻類から「光合成の力」を盗むウミウシ

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レタスウミウシ/ Credit: en.wikipedia

レタスウミウシは、カリブ海などに生息する小さなウミウシで、その見た目から「海のレタス」とも呼ばれています。

このウミウシが食べるのは、主に緑藻類。

ところが、ただ藻を消化して栄養にするだけでは終わりません。

レタスウミウシは、藻類の中にある「葉緑体」を盗み出して、自らの細胞の中に取り込んでしまうのです。

葉緑体とは、植物や藻類が光合成をするために使う装置のようなもの。光を受けて、エネルギー(糖)を作り出すはたらきをします。

普通、葉緑体は植物の細胞の中でのみ機能し、動物の体内では生きられません。

それなのにレタスウミウシの体内では数カ月間(最大で9カ月!)も機能し続けるのです。

どうしてそんなことができるのでしょうか?

実は、葉緑体が働くには、それを制御するための化学情報(酵素)が必要です。

ふつうは藻類が持っている「核」が光合成を開始するのに必要な酵素を供給しているのですが、ウミウシは藻類の核は自らに取り込むことなく捨ててしまいます。

つまり、葉緑体だけ盗んで、そのまま使っているのです。

これまでは「なぜそれが可能なのか」がまったくわかっていませんでした。

盗んだ葉緑体が、なぜ核もなしに壊れず、動き続けているのか――そのメカニズムは、謎に包まれていたのです。

次ページ葉緑体を守る「クレプトソーム」の発見!

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