がんの『転移能力』を支えるのは何か?

がん細胞は体のさまざまな場所へ転移し、私たちの命を脅かします。
しかし、どのがん細胞も簡単に転移できるわけではありません。
転移は、がん細胞にとって過酷な「旅」であり、血液の流れや活性酸素など、さまざまなストレスを乗り越える必要があります。
では、一部のがん細胞がなぜ過酷な状況を乗り越え、遠く離れた臓器で再び増殖できるのか、その秘密はどこにあるのでしょうか。
最近の研究では、がんの内部や周囲に入り込んだ神経細胞が、がんの成長や転移を助ける可能性が指摘されています。
腫瘍の病理検査によると、神経が密集しているがんほど進行が早く、予後も悪いことがわかっています。
また、がん細胞自身が特定の物質を分泌し、神経を引き寄せたり、新たな神経の発達を促したりすることも報告されています。
つまり、神経とがん細胞の間には何らかの「密接なつながり」が存在するようなのです。
しかし、神経細胞が具体的にどのような方法でがん細胞の成長や転移をサポートしているのかは、まだ謎に包まれています。
例えば、神経からがん細胞に対して栄養や信号を提供するなどの「援助」が考えられますが、実際に何をどのように提供しているのかは明確ではありませんでした。
そこで米国サウスアラバマ大学の研究チームは、神経とがん細胞がどのように「会話」をし、がんの成長や転移能力に影響を与えているかを詳しく調べることにしました。
特に、神経細胞ががん細胞のエネルギー代謝を変化させ、転移を促進するという可能性に着目しました。
がん細胞が神経細胞と接することで、エネルギーを効率よく確保し、転移に有利な能力を手に入れることがあるのでしょうか。