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Credit: Artwork by Ruairidh Duncan. Source – Museums Victoria
paleontology

サメのような歯をもつ「新種の古代クジラ」を発見

2025.08.14 21:00:24 Thursday

現代のクジラといえば、口にヒゲ板を備え、プランクトンを大量に濾し取る穏やかな海の巨人を思い浮かべる人が多いでしょう。

(もちろん、鋭い歯でイカなどを食べるハクジラ類もいますが)

しかし約2500万年前のオーストラリア近海には、穏やかなクジラのイメージを根底から覆す“捕食者”が存在していたようです。

その名は「ヤンジュケトゥス・ダラルディ(Janjucetus dullardi)」

豪モナシュ大学(Monash University)により発見されたこの新種クジラは、鋭いサメのような歯をもち、イルカほどの大きさで獲物を追い回していたと考えられます。

研究の詳細は2025年8月12日付で科学雑誌『Zoological Journal of the Linnean Society』に掲載されています。

Shark-like ancient whale with slicing teeth discovered on Victoria’s Surf Coast https://phys.org/news/2025-08-shark-ancient-whale-slicing-teeth.html ‘Deceptively cute’ ancient whale with razor-sharp teeth and eyes the size of tennis balls discovered in Australia https://www.theguardian.com/environment/2025/aug/13/deceptively-cute-ancient-whale-with-razor-sharp-teeth-and-eyes-the-size-of-tennis-balls-discovered-in-australia
An immature toothed mysticete from the Oligocene of Australia and insights into mammalodontid (Cetacea: Mysticeti) morphology, systematics, and ontogeny https://doi.org/10.1093/zoolinnean/zlaf090

サメの歯を持つクジラ?

今回の化石は、2019年6月にオーストラリア南東部・ビクトリア州サーフコーストの浜辺で発見されました。

第一発見者となったのは、地元の学校校長ロス・ダラード(Ross Dullard)氏です。

その後、寄贈を受けたビクトリア博物館の研究チームが詳細に解析した結果、この化石は、現生ヒゲクジラ類の初期系統に属する「マムマロドン科」の未成熟個体であり、既知のどの種とも異なる特徴を備えていることがわかりました。

発見されたのは、部分的な頭骨と耳の骨、中耳の小骨、そして7本の歯です。

推定全長は約2〜2.2メートルで、成長しても3メートル程度と見られています。

現生のヒゲクジラとは異なり、口には肉を切り裂くための二本根の歯が並び、歯の表面には縦方向の稜が走っていました。

これらの歯は、魚や小型の海生哺乳類などを捕らえるのに適した構造です。

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見つかった新種の化石/ Credit: Tom Breakwell. Source: Museums Victoria

さらに、化石の頭骨からはテニスボール大に匹敵する大きな眼窩が確認されました。

大きな目は視覚による捕食に有利で、浅く温暖な海で俊敏に泳ぐ捕食者だったことを示しています。

この特徴は、アザラシなど一部の海獣が持つ“潜水時の視覚適応”と似ており、マムマロドン科の生態に新たな視点を与えます。

解析の結果、この個体は若い亜成体であることが判明しました。

頭骨の骨同士がまだ融合しておらず、歯の摩耗もほとんどありません。

歯髄腔が開いたままであることも、成体に達していない証拠です。

こうした未成熟個体の化石はきわめて珍しく、ヒゲクジラ類の成長過程を知るうえで貴重な資料となります。

次ページクジラ進化史の空白を埋める発見

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