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biology

脳が大きい霊長類ほど、体の「ある部分」が長くなっていた

2025.08.28 07:00:09 Thursday

人類の進化を語るとき、必ずと言っていいほど登場するキーワードが「大きな脳」「器用な手」です。

大きな脳によって複雑な文化や道具作りが可能になり、器用な手によってそれを実際に形にできる。

しかし、この2つはそれぞれ別々に進化したのではなく、脳の大きさと「ある体の部位の長さ」が密接に関わっていることが最新の研究で明らかになりました。

その「ある部位」とは親指だったのです。

研究の詳細は2025年8月26日付で科学雑誌『Communications Biology』に掲載されています。

Primates with longer thumbs tend to have bigger brains, research finds https://www.theguardian.com/science/2025/aug/26/primates-with-longer-thumbs-tend-to-have-bigger-brains-research-finds
Human dexterity and brains evolved hand in hand https://doi.org/10.1038/s42003-025-08686-5

親指と脳の意外な関係

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英レディング大学(University of Reading)とダラム大学(Durham University)の研究チームは、95種類の霊長類(現生と絶滅化石を含む)のデータを比較し、脳の大きさと手の形態の関係を調べました。

その結果浮かび上がったのは、「脳が大きい霊長類ほど親指が長い」という関連性でした。

私たち人間は、道具を精密に扱える“特別な手”を持つと長いあいだ考えられてきました。

実際、人間の親指は他の類人猿よりも長く、物をしっかりつかんだり細かく操作したりするのに適しています。

しかしチームが系統進化を考慮した統計モデルで分析すると、この傾向は人間だけの特別なものではなく、霊長類全体に共通する進化パターンであることがわかりました。

つまり、親指が長いからこそ脳が大きくなり、脳が大きいからこそ手先をより器用に動かせる――この両者は切っても切り離せない関係にあると考えられるのです。

特に興味深いのは、脳の中でも「小脳」ではなく、大脳新皮質との関係が強く見られたという点です。

大脳新皮質は「感覚」や「運動の計画」「行動の調整」に関わる領域であり、まさに手先の精密な操作に直結しています。

これは「大きな脳=知能の高さ」ではなく、「大きな脳=より高度な手の使い方ができる」という進化的なつながりを示しているのです。

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