星の死に潜む「玉ねぎ構造」とは?
私たちが見上げる夜空の星は、ただ輝いているだけではありません。
内部では核融合と呼ばれる壮大な反応を繰り返し、莫大なエネルギーを生み出すと同時に、新しい元素を生み出し続けています。
とくに太陽の10倍から100倍もの質量をもつ「大質量星」は、宇宙における“元素工場”の役割を担っています。
水素から始まり、ヘリウム、炭素、酸素、シリコンといったより重い元素が中心部で次々と合成され、最終的には鉄の核が形成されます。
この過程で星の内部は「玉ねぎの皮」のように層を重ねる構造になり、外側には軽い元素、内側には重い元素が積み重なっていくのです。
星は寿命の終わりに近づくと、自らの重さに耐えきれず中心部が崩壊します。
その瞬間に起こるのが「超新星爆発」です。
この爆発は膨大な光とエネルギーを放ち、星の内部で作られた元素を宇宙空間へとまき散らします。
私たちの身体を形づくる鉄やカルシウム、さらには地球を構成する物質も、かつて遠い宇宙で死んだ星が残した“遺産”なのです。
しかし、ここで大きな問題がありました。
理論上は玉ねぎ状の層構造があると考えられてきましたが、その「最深部」が本当に存在するのか、直接証拠はこれまで誰も見たことがなかったのです。
観測で確認されたのは、せいぜい外側のヘリウムや炭素、酸素の層まででした。
鉄の核を取り囲むシリコンや硫黄の層は、長年「存在は予言されているが、観測はできない領域」だったのです。