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※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
space

コケが「9カ月間の宇宙滞在」でも生存できると判明

2025.11.21 12:00:15 Friday

地球の森や岩場にひっそりと生きる「コケ」。

その小さな植物が、実は「宇宙の過酷な環境」にも耐えられることが、北海道大学によって報告されました。

研究チームは、モデルコケ植物として知られる「ヒメツリガネゴケ」の胞子を国際宇宙ステーション(ISS)の船外に9カ月間も設置し、真空・強烈な紫外線・宇宙放射線・極端な温度差といった宇宙環境にさらしました。

しかし地球に帰還した胞子は、なんと80%以上が正常に発芽

これは「コケが実際の宇宙空間で長期間生存できることを示した世界初の実証」であり、月や火星で植物を育てる未来に向けて大きな一歩になると期待されています。

研究の詳細は2025年11月20日付で科学雑誌『iScience』に掲載されました。

Moss Survived 9 Months in The Vacuum of Space https://www.sciencealert.com/moss-survived-9-months-in-the-vacuum-of-space コケの胞子、宇宙でも生き延びる~持続可能な宇宙居住への第一歩~ https://www.hokudai.ac.jp/news/2025/11/post-2125.html
Extreme environmental tolerance and space survivability of the moss, Physcomitrium patens https://doi.org/10.1016/j.isci.2025.113827

コケは宇宙空間でも生き残れるのか、実験

宇宙で植物を育てるには、当然ながら「宇宙空間でも死なない植物」が必要になります。

しかし宇宙は、真空、強烈な紫外線、宇宙放射線、そして昼は100℃近く、夜はマイナス100℃以下にもなる極端な温度変動という、生物にとって致命的な環境です。

特に植物は地上で光を浴びて育つため、宇宙の紫外線や乾燥にとても弱く、これまで実宇宙環境で長期曝露して生き残るケースはほとんどありませんでした。

こうした中、チームが目をつけたのが「ヒメツリガネゴケ(学名:Physcomitrella patens)」というコケ植物です。

コケは地球上で最初に陸へ進出した植物であり、長い進化の過程で

・乾燥

・温度変化

・紫外線

といった過酷な環境に耐える能力を獲得してきました。

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ヒメツリガネゴケ/ Credit: Tomomichi Fujita

チームはまず、ヒメツリガネゴケの3種類の組織を地上でテストしました。

・原糸体(幼若体)

・ストレス耐性細胞(brood cell)

・胞子(コケ版の「種子」)

それぞれを紫外線、極低温、真空、高温などにさらした結果、最も強かったのは圧倒的に胞子でした。

原糸体は紫外線で全滅、ストレス耐性細胞は少し生き残り、胞子はすべてのストレスで高い生存率を示しました。

「ならば、実際の宇宙空間でも胞子なら耐えられるのではないか?」

こうして、宇宙曝露実験が決定されたのです。

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