画像
Credit:Canva
psychology

コメント欄はなぜ「常連さん」に支配されるのかを解明

2025.12.12 18:00:30 Friday

ドイツのマックス・プランク人間発達研究所(MPIB)で行われた研究によって、ネット記事のコメント欄が一部の常連さんに支配されている仕組みがみえてきました。

研究者たちが520人を対象に行った大規模実験によれば、議論の場の雰囲気を「攻撃的で荒れている」と感じた参加者ほど発言を控える傾向が強い一方で、同じ雰囲気を感じても積極的に発言を続ける少数派がおり、結果的に彼らが議論を主導してしまったのです。

過激な議論の場では大多数が沈黙し、ごく少数の声だけがひときわ大きく響いていたわけです。

研究者たちは、この偏りはコメント欄を「世論の縮図」と勘違いさせる危険性があると警鐘を鳴らしています。

しかし、そもそもなぜ荒れた空気は人を黙らせると同時に、別の人を“常連化”させてしまうのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年12月10日に『Science Advances』にて発表されました。

Online discussions: Whose voices are heard? https://www.mpg.de/25857449/1210-bild-online-discussions-whose-voices-are-heard-149835-x?c=2249
Disentangling participation in online political discussions with a collective field experiment https://doi.org/10.1126/sciadv.ady8022

常連さんがいるコメント欄は荒れやすい?

常連さんがいるコメント欄は荒れやすい?
常連さんがいるコメント欄は荒れやすい? / Credit:Canva

ネットのコメント欄に、いつも同じ顔ぶれが居座っていると思ったことはないでしょうか?

たとえばニュースサイトの記事についてのコメント欄を思い浮かべてみてください。

よく登場する「常連さん」の投稿ばかりが目につき、多くの利用者は結局読むだけで書き込まない—そんな光景に見覚えがある人も多いのではないでしょうか。

実際、この現象は以前から指摘されてきました。

オンラインのディスカッションではごく一部の積極的なユーザーが議論を牽引し、大多数は沈黙に回る傾向があるとされています。

そして困ったことに、この不均衡によって世論の見え方が歪められ、社会の分断(極端な対立)が進む可能性もあると考えられています。

声の大きな常連ほど意見が過激になりやすいという報告もあり、コメント欄ばかり見ていると「みんなこんな極端なことを考えているのか」と誤解してしまう恐れがあります。

しかもSNSはattention economy(注目の奪い合い)の世界です。

強い言い方ほど目に入りやすく、反応も集まりやすい傾向があります。

すると、過激さや攻撃性が“得”になる場面が出てきます。

荒れている場所は、普通なら人が離れて静かになりそうです。

ところが経験的には、荒れた場所ほど、むしろ書き込みが増えるようにも見えます。

黙る人が増えるのに、残った少数はますます目立つという逆転現象が起こるのです。

この現象は、沈黙の螺旋(少数派だと思うと黙るという考え方)にも似ています。

周りが怖いと、普通の人は声を引っ込めます。

その結果、残った声が「多数派」に見えてしまい、さらに黙る人が増える。

もしコメント欄でこれが起きているなら、私たちが見ている“空気”は、かなり偏ったものになります。

ところが、オンライン政治談議において誰が「見る専門(=ロム専)」になり、誰が「投稿魔」になるのか、その違いを決定づける要因はこれまでよく分かっていませんでした。

そこで今回研究者たちは、読むだけの人も含めて最初から集め、同じ条件で議論の場に入れて、誰が黙り、誰が常連になるのかを前向きに確かめました。

もし「毒」が本当に常連を増やすなら、私たちが“世論”だと思って見ているコメント欄は、いったい何を映しているのでしょうか。

次ページ一部の常連さんは荒れたコメント欄が大好物で連投する

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

心理学のニュースpsychology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!