空間から粒子が出現する様子を初めて捉えた――真空のゆらぎから質量が生じる可能性
空間から粒子が出現する様子を初めて捉えた――真空のゆらぎから質量が生じる可能性 / Cre4dit:Canva
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空間から粒子が出現する様子を初めて捉えた――真空のゆらぎから質量が生じる可能性

2026.04.14 19:05:47 Tuesday

空っぽの部屋を想像してみてください。

家具も空気も光も、全部取り去った、完全な「無」の空間です。

ところが現代物理学は、ずっと奇妙なことを言い続けてきました。

完全な真空は、実は何もない場所ではない、と。

目に見えないほど短い時間のあいだに、粒子と反粒子のペアが”ポッ”と現れては、すぐに消えている。

真空とは、そんなちらちらと泡立つ場所なのだ、というのです。

これは誰かの思いつきではありません。

そう考えないと、この世界のさまざまな現象がうまく説明できないのです。 だから物理学者たちは長いあいだ、真空はそういうものだと信じてきました。

けれど、その”出現の瞬間”を実験で捉えた人は、これまで誰もいませんでした。

あまりに一瞬の出来事で、捕まえる手立てがなかったのです。

真空の底で起きているはずの出来事は、理論の計算式の中にだけ閃く、幻のようなものでした。

しかし今回、アメリカのブルックヘブン国立研究所(BNL)に集まった国際チームが、ついにその瞬間の“決定的な証拠”を掴みました。

論文の中で研究チームは、「最初の証拠」という言葉を使い、真空からクォークという粒子が生まれたことを示す、史上初めての実験的な手がかりを得たと宣言したのです。

研究内容の詳細はは2026年2月4日に『Nature』にて発表されました。

Measuring spin correlation between quarks during QCD confinement https://doi.org/10.1038/s41586-025-09920-0

真空は「沸き立つ海」である

真空は「沸き立つ海」である
真空は「沸き立つ海」である / Cre4dit:Canva

物質をどんどん細かくしていくと、最後は原子よりもずっと小さな素粒子にたどり着きます。

なかでも、陽子や中性子といったあなたの体を形作る粒の中身を担っているのが、「クォーク」と呼ばれる素粒子です。 あなたの体も、机も、星も、その根っこをたどれば原子核の中のクォークに行き着きます。

ところがクォークには実は6種類あり、陽子や中性子などに使われているのは「アップ」と「ダウン」という2種類の、いちばん軽くてありふれたクォークです。

残りの4種類(チャーム、ストレンジ、トップ、ボトム)は、普段は姿を見せない、少し珍しいクォークたちなのです。

しかし、この本来なら珍しいクォークたちが、意外な場所に顔を出します。

それが、真空のゆらぎです。

何もないはずの真空にも、ごく微細なエネルギーのゆらぎが絶えず走っています。

そのゆらぎの正体こそが、エネルギーがほんの一瞬だけ粒子の姿を借りて現れ、すぐに消えていくという奇妙な現象。

このとき今回の研究で主役となるのが、”ストレンジ(奇妙)”という名前を持つこのクォークと、その相棒である反ストレンジクォークです。

ただその寿命はあまりにも短く、一秒を一兆回に分けた、そのさらに一兆分の一にも満たないほどの一瞬。

生まれて、消えて、また生まれて、消えて──。

現れたそばから消えていくこのつかのまの存在を、物理学者は「仮想粒子」と呼びます。

水面にぷくっと浮かんで、すぐに弾けてしまう小さな気泡、そんなイメージに近いでしょう。

とはいえ、これまでこの一瞬の気泡を、誰ひとりとして実験で掴まえた人はいませんでした。

理論の計算式の中ではたしかに存在が予言され、実在を示す間接的な状況証拠もいくつも積み重ねられてきました。

しかし、その姿を「まさに生まれた瞬間の粒子」として捉えた者はいない。

真空の内側は、長らく人類にとって、どうしても最後のひと押しで手が届かない領域だったのです。

そこで研究者たちは力技を試しました。

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