創造性にあふれた大物たちは自虐ネタでレジェンドを作っている
自虐ネタは数あるユーモアの中でも、最も難易度が高いものの1つです。
「俺って何をやってもダメだから」
「私って不細工なの」
などは単なる自虐で「ネタ(ユーモア)」が含まれていません。また
「うちの会社ってマジ終わってるから」
「地元がクズばっかりだったから」
などは自分以外の存在を引き合いにだしており、自虐ではなく単なる愚痴です。
一方で、ソフトバンクの孫正義社長は自身のハゲについて
「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」
と述べ、その言葉は多くの人々の記憶に残りました。
孫正義社長の先進性は誰もが疑わない事実ですが、ハゲもまた疑いようのない事実です。
ですが孫正義社長はこれら2つの客観的事実を合わせて、自虐ネタを完成させました。
自分自身のキャラをわかっているからこその自虐ネタと言えるでしょう。
またFacebookの創始者であるマーク・ザッカーバーグ氏は、かつての母校であるハーバード大学に招かれ、卒業生たちへの祝辞を求められた際に冒頭でいきなり
「あなた方は私ができなかったことを成し遂げた(ザッカーバーグ氏は中退したから)」
と切り出し、笑いと共に人々を一気に引き付けました。
ハーバード大中退の経歴を持つ自分の存在、にもかかわらず卒業式で祝辞を述べさせられている奇妙さ、Facebookの創始というハーバード卒業よりも遥かに難易度の高いことを成し遂げた自らの業績……それらすべてを計算して混ぜ合わせ、自虐ネタを成功させたのです。
さらにザッカーバーグ氏の自虐ネタは、ハーバード大卒の「肩書」を得た卒業生たちに対して、多くを成し遂げた企業家としての「小粋な挑戦状」とも言えるでしょう。
さらに万有引力を説いたアイザック・ニュートンの述べた
「私は海辺で遊んでいる少年のようである。ときおり、普通のものよりもなめらかな小石やかわいい貝殻を見つけて夢中になっている。真理の大海は、すべてが未発見のまま、目の前に広がっている」
という一説は、全ての物理学者が記憶するものになっています。
自分を浜辺で貝や小石を拾っている「少年に過ぎない」と自虐するシンプルなものですが、今日の科学文明は全て彼が拾った「貝」や「小石」の上に築かれています。
ニュートンの場合は笑いを取ろうとしたかは不明ですが、自らを卑下した言葉が正反対の尊敬や感銘を与える効果をうんだのは間違いありません。
このように自虐ネタは成功すれば単なる笑いを超えて、一発で場の雰囲気を変え、自分の存在を強く他人に、ときには歴史にも刻み込めるようになります。
そこで今回、首都師範大学の研究者たちは自虐ネタを得意とする人の脳を調べ、自虐ネタがどのような神経メカニズムで生成されるかを調べることにしました。
自虐ネタがうまれるとき、脳の中では何が起きているのでしょうか?