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ウーパールーパーが陸生への「変態能力」を手に入れてしまった裏話 (2/2)

2021.12.11 Saturday

前ページ死ぬまで「幼い姿」のまま

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なぜ「変態能力」を手に入れてしまったのか

野生下のアホロートルは絶滅の危機に瀕しており、わずかに存在するのはメキシコシティの湖辺のみですが、その一方で、世界中には研究やペット用の個体がたくさん広がっています。

これは、飼育できるアホロートルを野生とは別に作ったことで可能となりました。

そして、マサチューセッツ大学ボストン校(UMB・米)の両生類学者であるキャサリン・マカスカー(Catherine McCusker)博士いわく、飼育用のすべてのアホロートルは、わずか6匹の個体によって確立されたというのです。

たった6匹から生まれたため、飼育用のアホロートルは、遺伝的多様性に非常に乏しくなってしまいました。

こうした生物は病原体に対しとても弱く、また、遺伝子の近いもの同士の交配は、合併症の発生率をぐんと高めます。

アホロートルもこの問題から逃れられませんでした。

そこで専門家らは、遺伝子の多様性を高め、より健康で強いアホロートルにするため、近縁種のタイガーサラマンダー(学名:Ambystoma tigrinum)を交配させたのです。

タイガーサラマンダー
タイガーサラマンダー / Credit: en.wikipedia

アホロートルは、幼形成熟(ネオテニー)であり、一生を幼い姿のまま水中で過ごします。

ところが、タイガーサラマンダーは、最初は水生であるものの、成長するに従って、空気を吸う陸生へと変態する種。

この遺伝子を加えた結果、飼育用のアホロートルに、水生から陸生へと変態する能力があらわれ始めたのです。

しかし、この変態能力は、飼育用のすべてのアホロートルにあらわれるわけではないとのこと。

それでも、突然の変態に驚いたという飼い主も少なくないようです。

コートニー・ベイリー(Courtney Bailey )さんもその一人。

コートニーさんはある日、ペットのアホロートル「ゴラム(Gollum)」が、病気にかかっているように見えたそう。

仲間のいる水槽から隔離して様子を見たところ、1週間で以下のような変身を遂げてしまったのです。

「ゴラムのエラはなくなり、体色も変わって、まったく水を欲しがらなくなりました。本当に信じられませんでした」とコートニーさんは話します。

マカスカー博士は、アホロートルの変態について、こう述べています。

「最初の明らかな変化は、エラが退化し始めることです。

これが完了すると、水中で呼吸することができなくなるので、這い回るための “陸地 “を与えなければなりません。

また、陸地という新世界に適応するため、皮膚にも多くの変化が起こります。尻尾のヒレやフィンのような皮膚がなくなってしまうのです」

変態を受け入れる飼い主の一方で、「純白の愛らしい姿をとどめたい!」という方も多いでしょう。

実際、アホロートルの変態が起きやすくなる環境条件があります。

たとえば、水質の悪さ水温の高さ水位の低さ、それから水中のヨウ素が多いと、変態に必要な甲状腺ホルモンの分泌を促進してしまうという。

もし変態を避けたいのであれば、綺麗な水と温度、ゆったりできる広めの水槽を用意すると良いでしょう。

しかし、変態を見られるのも貴重なことです。

そのまま変身するに任せてみるのもいいかもしれません。

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