「しぶんぎ座流星群」の雑学
2022年の「しぶんぎ座流星群」の観測情報を知ったところで、さらに楽しむために知識を深めましょう。
「しぶんぎ」って何?
そもそも「しぶんぎ」って、普段聞き慣れない言葉ですよね。漢字にすると「四分儀」で、別名を象限儀といいます。
天体の地平線からの高度を測るために、古くから18世紀頃まで使われた天文観測器です。円の4分の1の扇形をしているため、「四分儀」と名付けられたのだそう。弧の部分の目盛環に0°から90°に目盛りが書かれおり、照準がついています。
手持ちのタイプのほか、据え置きタイプも。16世紀の天文学者、ティコ・ブラーエが観測に使った四分儀は円の半径が3mもあり、超巨大だったとか。
四分儀は太陽の高度から時刻を割り出すのに使われたり、13世紀頃から船乗りが星の位置から方角を知るために使われたりと広く普及していた道具でした。
「しぶんぎ座」という星座はない!
そんなポピュラーな道具でしたが、実は現在「しぶんぎ座」は存在しません。先にあげた、国立天文台の星図で「しぶんぎ座」ってなくね?と疑問に思っていた方は正解です。
現代の星図に描かれている星座は、1922年に国際天文学連合が選定した88個となっています。そのときにまでに作られすぎた星座が、整理されて88にまとめられました。
当時の正式名、「壁面四分儀(へきめんしぶんぎ)座」は19世紀前半には多くの星図で描かれていたものの、19世紀末には忘れ去られた星座になっていたため、88星座には選ばれなかったとのこと。
もしも「しぶんぎ座流星群っていうけど、しぶんぎ座ってどこ?」と聞かれたら、この話をすると、ちょっと感心されるかもしれませんよ。
現在はりゅう座の近くにあるので「りゅう座ι(イオタ)流星群」とも呼ばれる「しぶんぎ座流星群」。とはいえ、正式名は「しぶんぎ座流星群」なので、歴史の名残があるのはちょっと興味深いですよね。
母天体は?
多くの流星のもとになるのは、彗星の残したチリ(ダスト)です。特定の時期に流星群が起こるのは、彗星がチリを残した軌道上を地球が通るから。そして、その流星のもとになるチリの由来となる彗星を母天体と呼びます。
具体例をあげると、オリオン座流星群の母天体は、あの有名なハレー彗星、ペルセウス座流星群の母天体はスイフト・タットル彗星です。
「しぶんぎ座流星群」の母天体は、実はまだ確定されていません。有力視されているのは、彗星ではなくて小惑星(小惑星番号196256)。
発見自体が2003年と最近ですし、どうやって流星のもとになるチリを出したのかも不明。「三大流星群」と呼ばれても、まだなぞは多いようです。
そんなちょっとミステリアスさもある「しぶんぎ座流星群」。新年の願掛けを、流れ星にお願いしてみてはいかがでしょうか?