BL作品には女性の性的倒錯が隠れている
今回の研究により、異なる文化圏においてもBLは同じジャンルが人気であることが示されました。
「束縛と支配」が強化する登場人物の関係性、「動物の擬人化」による可愛らしさと動物的情熱の表現、「未成年」の要素を含む若さや年の差恋愛の様子は、文化を問わずBLファンの心を掴んでいました。
問題は、なぜ文化が異なるにもかかわらず、このような一致がみられるかです。
理由の1つは、女性の性的倒錯がBL人気の根底にあるからだと研究者たちは考えています。
ここで言う性的倒錯とは、現実ではありえないもしくは倫理的に問題になるシチュエーションのことを意味します
女性の性的倒錯は男性のように行動で発揮(→逮捕)されることはまれであり、多くが想像の水面下に隠された状態にあります。
ですが研究者たちはBL作品の中に、女性の性的倒錯を理解する鍵が潜んでいると考えました。
BL作品の主要な登場人物は当然ながら男性であり、その男性が「束縛と支配」や「レイプ」を行った場合、一見すると男性が男性固有の性的倒錯や欲望を満たしただけのようにみえます。
ですが研究者たちは、この一見すると男性の性的倒錯にみえる現象の多くが、実は女性の性的倒錯の表れでもあると考えています。
女性は男性の登場人物に自身を投影することで、自分の性的倒錯(好み)が作品で描かれることを楽しんでいる可能性が高いからです。
(注意:想像上の性的倒錯と現実世界は異なります。BL作品のレイプシーンが好きな女性がレイプされたがっているわけではありません)
そのため研究者たちはBL作品は表にはみえない女性の性的倒錯を理解するうえで、重要な役割を果たすと考えています。
BLの研究が進めば、性的倒錯という人間の複雑な精神状態の解明につながるかもしれません。
今回の研究によって得られたデータは、既存のBL研究の中で最大のものであり、BL研究の重要な基礎となるでしょう。
マディル氏は最後に「すべてのやおいファン(BLファン)に本当に感謝しています」と述べました。