イベリア半島はスピノサウルスの「ホームタウン」だった
「ML1190」と称される新種の化石は、実は新規の発見ではなく、1999年にポルトガルの地層から出土したものです。
2011年の研究で、スピノサウルスに近い「バリオニクス・ワルケリ(Baryonyx walkeri)」と発表されたのですが、疑問点も多く、その後も論争が続いていました。
ML1190の状態はあまり良くないものの、歯や肋骨、尾など、かなりの数の骨が残っています。
そして今回の再分析により、スピノサウルスの新種であることが判明したのです。
研究チームは、1999年に化石を発見したアマチュア古生物学者、カルロス・ナタリオ(Carlos Natario)氏の名前をとって、「イベロスピナス・ナタリオイ(Iberospinus natarioi)」と新たに命名しています。
こちらがその復元イメージと、化石の位置する部位を示したイラストです。
チームによると、新種の推定サイズは全長約10メートル、重さ3トンに達するとのこと。
顔はワニのように細長く、他種のスピノサウルスと同様に、水中を泳いで魚を捕食できたと考えられます。
研究主任のオクタビオ・マテウス(Octavio Mateus)氏は、新種の化石について、「世界で最も完全なスピノサウルス類の標本の一つである」と指摘。
その上で、「イベリア半島の多様なスピノサウルス類にまた新たな種が加わったことは、このグループが西ヨーロッパを起源とする可能性を示している」と述べています。
起源の正否は別にせよ、イベリア半島からは新種も含め、複数のスピノサウルスの化石が見つかっており、当時のポルトガルがこの種族のホームタウンであった可能性はかなり高いようです。
またマテウス氏は「スピノサウルスは、水生環境へのユニークな適応とその化石の希少性から、最も謎めいた獣脚類恐竜の一つである」と語ります。
彼らの食事は主に魚類でしたが、これまでの研究で、翼竜も含まれていたことが分かっています。
非常にどう猛な捕食者だったようですが。残念ながら、ティラノサウルスほどは研究が進んでいません。
研究チームによれば、原因は、化石記録が断片的すぎることと、特異なボディプラン(同じ種類で共通した身体的特徴)から生態の解明が難しいことにあります。
彼らが一日の大部分を水中で過ごし、魚を専門に食べていたのか、あるいはサギのように水辺をうろついて狩りをしていたのか、いまだ議論に決着がついていません。
詳しい生態の解明のためにも、新たな化石の発見が待たれます。