軍港と思われていた人工プールは「星座を映す水の鏡」だった
軍港と思われていた人工プールは「星座を映す水の鏡」だった / Credit: Lorenzo Nigro et al., Antiquity(2022)
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紀元前シチリア島の都市には「天空の星座を映す聖なる水鏡」のプールがあった

2022.03.22 Tuesday

1920年代に、伊シチリア島で発見された約2500年前の人工の貯水池。

これまで、軍事や貿易のための内港と考えられていましたが今回、ローマ・ラ・サピエンツァ大学(Sapienza University of Rome)の研究により、天空を映し出す「聖なるプール」だったと発表されました。

研究主任のロレンツォ・ニグロ(Lorenzo Nigro)氏によると、プールは特定の星座に合わせて、夜空の星を映し出すように設計されているという。

「全盛期には、神を祀る祭壇が設けられた巨大な聖域の中心だったでしょう」と話します。

ここでは「聖なるプール」が作られた背景や、内港という現代解釈が180度転換した経緯について、ひも解いていきましょう。

研究の詳細は、2022年3月17日付で学術誌『Antiquity』に掲載されています。

Ancient sacred pool lined with temples and altars discovered on Sicilian island https://www.livescience.com/ancient-sacred-pool-sicily
The sacred pool of Ba’al: a reinterpretation of the ‘Kothon’ at Motya https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/sacred-pool-of-baal-a-reinterpretation-of-the-kothon-at-motya/329646E6561765FD30A9D6EC5FD5B6CB

「フェニキア人」によって作られた人工プール

シチリア島西部にあった「モティア」の位置
シチリア島西部にあった「モティア」の位置 / Credit: Lorenzo Nigro et al., Antiquity(2022)

この人工プールは、かつてシチリア島の西海岸にあった古代都市・モティア(Motya)にて建設されました。

モティアは、広さ40万平方メートル弱(東京ドーム8.5個分)の都市としては小さな場所です。

初期の定住民は、目の前の海で採れる豊富な魚や塩、また真の供給やラグーン内の保護された立地条件により大いに繁栄しました。

BC8世紀に入ると、地中海東岸の民・フェニキア人がやってきて、地元民と共生し、文化や技術を持ち込みます。

そのおかげか、モティアはわずか100年の間に、地中海の西方へ広がる交易ネットワークを持つ港町にまで成長したのです。

モティアのマップ(一番下の緑の部分が人工プールのあるエリア)
モティアのマップ(一番下の緑の部分が人工プールのあるエリア) / Credit: Lorenzo Nigro et al., Antiquity(2022)

しかしそのせいで、北アフリカ沿岸に栄えた強国・カルタゴに目をつけられるようになりました。

BC550年ころ、カルタゴ軍はモティアに攻撃をしかけ、壊滅的なダメージを与えます。

それでもモティアの民は立ち直り、すぐに都市を再建しました。

その中で、1920年代に見つかった「人工のプール」も作られたのです。

人工プールは、カルタゴの軍港として機能していた人工港「コソン(Kothon)」に似ていたため、これもその一つと考えられました。

また、1970年代には、を修理するための場所だったという解釈が追加されます。

ところが、研究主任のニグロ氏は、60年にわたるモティアでの調査から、まったく別の解釈を唱えました。

それは、「軍港ではなく、神を祀る聖なるプールだった」という説です。

その解釈に至った根拠を次に見ていきましょう。

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