朝型は「夜ふかし」が、夜型は「早起き」が危険
今回の調査では、第三次産業42社(IT、官公庁、金融、放送業、コンサル業など)の従業員を対象に、2017〜2019年にわたって質問紙調査を実施。
それに回答した9264名のうち、研究へのデータ利用に同意した8155名(平均年齢は36.7歳)を分析の対象としました。
体内時計の指標のひとつに、「MSFsc(Midpoint of sleep in free days=規制のない日の睡眠中央時刻)」があります。
これは、睡眠負債がない状態で、自然に眠り自然に起きたときの、睡眠時間帯の中央時刻を意味します。
データをまとめたところ、対象者のMSFscは平均4:16となっていました。この時刻の大体前後4時間が多くの人の寝起き時刻と考えられます。
つまり、0時過ぎに寝て8時過ぎに起きるのが自然のリズムである人が最も多いということです。
一方で、その分布も幅広く、22:30頃に寝て6:30前に自然に起きる朝型の人や、1:30以降に寝て9:30以降に起きる夜型の人も見られました。
こうした違いは、その人が持つ体内時計の傾向「クロノタイプ」によるものだと考えられています。
そしてデータ解析の結果、全体としては「夜ふかし」と「早起き」が、それぞれ生産性の低下と関連していることがわかりました。
具体的には、1時間の遅寝で0.29%、1時間の早起きで0.14%生産性が低下しています。
さらにこの生産性への影響は、その人のクロノタイプ(朝型・夜型)によって異なっていました。
朝型にとって、起床時刻はプレゼンティズム(生産性低下)と有意に関連せず、寝に入る時間の遅れのみが関連しています。
反対に、夜型にとって、寝に入る時間はプレゼンティズムと有意に関連せず、起床時刻の早さのみが関連していました。
(朝型は入眠が1時間遅れると0.48%、夜型は起床が1時間早まると0.26%、生産性が低下していた)
このことから、朝型は自然に眠くなる時間に抗って”夜ふかし”をすると、あるいは、夜型は自然に目覚める時間に抗って”早起き”すると、パフォーマンスの低下や体の不調につながるリスクが高まるようです。
また、単純な比較では、夜型であればあるほど、プレゼンティズムが生じやすいようでした。
しかし、夜型傾向と生産性低下に直接の関連性はなく、メカニズム的には、あくまでも睡眠の問題を介するようです。
まとめ
クロノタイプによって、パフォーマンスの上がる時間帯には個人差があります。
それに反して無理をすると、たとえば、朝型が夜勤をしたり、夜型が早朝出勤をすると、発がんリスクや死亡リスクが高まると指摘されています。
クロノタイプそのものは、遺伝や細胞周期に起因しており、自らの意思で後天的に変えるのは困難です。
よく「早起きは三文の徳(得)」と言われますが、無理にクロノタイプに逆らうと、「早起きは三文の損」になりかねません。
海外の研究では、高校の始業時間を遅らせることで生徒全体の成績が上がるという報告もされています。
社会生活の中で、自分のクロノタイプに合わせて行動することは困難ですが、健康な生活とパフォーマンスの向上を図るために、今後世の中は、すべてのタイプの人にとって最適な始業時間を設定する必要があるかもしれません。