安全性の検証には遺伝操作した子猫の成長を見守る必要がある
タンパク質の設計図となる遺伝子を人間の都合で排除したとして、猫の健康に問題がないのか?
残念ながら現在のところ、この疑問に正確に答える術はありません。
ただ致命的な健康悪化にはつながらない可能性があります。
研究者たちが家猫に加えてライオンやトラ、クーガー、スナドリネコなど他の猫科の遺伝子を分析したところ、猫アレルギーの原因遺伝子は種間でも個体間でもかなり違いが大きいことが判明しました。
生物の遺伝子は酸素呼吸や視覚など生存に必須な遺伝子ほど変異が小さく、毛の色や瞳の色といった生存に必須ではない遺伝子では違いが大きくなる傾向があります。
猫アレルギーの原因遺伝子が種間・個体間での違いが大きいという事実は、猫にとってこの遺伝子の重要度が比較的低いことを示します。
つまり、なくなっても問題ない遺伝子の可能性があるのです。
しかし明確な結論を出すには、猫の命を使った動物実験が必要になります。
具体的には、猫の受精卵から猫アレルギーの原因遺伝子を排除し、うまれてきた子猫に医学的な問題が起こるかを確かめる必要があります。
その場合、検証規模は数匹にとどまらず、数十匹・数百匹が対象になる可能性があります。
マウスなどを使った動物実験ではありふれた手段であり、遺伝編集の影響を調べるために組織解剖・組織染色まで行われるのが一般的です。
倫理的な負担があるものの、健康被害がないと確認できた場合「猫アレルギーのせいで猫が飼えない」という人間の不満を1つ解消させることができるでしょう。