背後から「不意打ち」にあった可能性
トリケラトプス(Triceratops)は、ティラノサウルスと並ぶ有名な恐竜で、後期白亜紀マーストリヒチアン期(約7210万〜6600万年前)の北米に存在しました。
最大の特徴は、なんといっても、頭頂骨と鱗状骨(頬骨の主成分)が伸びてできたフリル(襟飾り)でしょう。
フリルはトリケラトプスの代名詞ですが、意外にも、その使い方は完全に解明されていません。
しばしば傷や骨折の痕が見られることから、同種との争いや、肉食恐竜に対する盾として機能したことは確かでしょう。
一方で、専門家の中には「フリルは一種の装飾であり、異性へのアピールやライバルへの威嚇に使われた」とする意見もあります。
そこで本研究では、2014年に米北部モンタナ州のヘルクリーク累層で見つかったトリケラトプスの骨格標本「ビッグ・ジョン」を対象に、フリルの調査を行いました。
まず目を引くのは、フリルの右側にある鍵穴型の開口部です。
開口部の周りの骨は表面がデコボコしており、プラーク状の骨の沈着物がいくつも見られました。
これは傷口からの炎症によるものと思われます。
また、開口部の状態を顕微鏡で詳しく調べたところ、これは他のトリケラトプスの角により、正面ではなく、背後から突き刺されたものと判明しました。
ただ、フリルに当たったおかげで、頭部へ届くことはなく、致命傷とはならなかったようです。
それでも、開口部の傷はかなり重症で、ビッグ・ジョンが死んだときでさえ、まだ治癒の途中にありました。
チームは、この刺し傷について、「ビッグ・ジョンが死ぬ6カ月以上前につけられたものだろう」と推測しています。
骨の治り方は「哺乳類」と似ている
開口部には、哺乳類によく似た骨癒合の兆候が見つかっています。
さらに、傷口をミクロレベルで観察した結果、開口部は、そこから離れた骨組織と比べて、多孔質で血管がたくさん通っていたことがわかりました。
これは、骨が新たに形成されているサインであり、哺乳類や鳥類の骨の治癒にも同じプロセスが見られます。
恐竜の骨の傷がどのように回復するかはまだ解明されていませんが、この見解が正しければ、私たち自身の骨が治るプロセスと驚くほどよく似ているかもしれません。
最終的にビッグ・ジョンが死に至った原因は不明ですが、本研究の成果は、トリケラトプスにおける種内戦の存在を実証するものです。
研究チームは「外傷性病変を持つ化石の調査をさらに進めることで、恐竜の骨の病態生理学をより明らかにできるかもしれない」と述べています。
昔から卑怯な奴は、いたんですね。‼️