アオリイカの擬態能力がついに発見される
アオリイカの擬態能力がついに発見される / Credit: Ryuta Nakajima et al., Scientific Reports(2022)
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ツツイカの「カモフラージュ能力」が水槽の掃除中に偶然発見される!

2022.04.14 Thursday

イカは、周囲の環境色に合わせて擬態することで有名ですが、実はそのカモフラージュ能力が知られているのは、主に「コウイカ(cuttlefish)」というグループです。

もう一方の「ツツイカ(Squid)」では、そのような能力はいまだ報告されていません。

しかしこのほど、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究により、ツツイカでもカモフラージュ能力が確認されました

実験室の条件下でツツイカの擬態がカメラで撮影されたのは、今回が初のことです。

研究の詳細は、2022年3月28日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

Video Shows Off a Squid’s Unexpected Camouflage Skill For The First Time https://www.sciencealert.com/some-squid-show-incredible-camouflage-abilities-on-par-with-octopuses-and-cuttlefish 第3の頭足類ツツイカが背景に合わせて体色を変化させることを初めて記録 https://www.oist.jp/ja/news-center/press-releases/37104
Squid adjust their body color according to substrate https://www.nature.com/articles/s41598-022-09209-6

偶然見つかったツツイカのカモフラージュ能力

コウイカ
コウイカ / Credt: ja.wikipedia

コウイカは、水深10〜100m程度の海域に生息するため、研究や飼育が比較的容易です。

一方のツツイカはおもに外洋に分布する傾向にあるため、飼育や擬態の調査が困難でした。

しかし2017年に、OISTの物理生物学ユニットの研究チームは、ツツイカに分類されるアオリイカの1種を長期飼育化し、実験観察を行うことに成功しました。

このイカは、地元沖縄で「シロイチャー(シロイカ)」と呼ばれ、親しまれています。

研究チームは、このツツイカが、普段は淡い白をしてるものの、海底に近づくことでまったく違う色になるのではないか、と考えました。

研究主任の一人である中島隆太氏は、こう話します。

「通常、ツツイカは外洋で遊泳していますが、このような外洋と浅海の両方を生活圏としたイカが、サンゴ礁に少し近づいたり、捕食者によって海底に追い詰められたりするとどうなるかを調べたいと思いました」

マリン・サイエンス・ステーションで飼育に成功した沖縄のアオリイカ
マリン・サイエンス・ステーションで飼育に成功した沖縄のアオリイカ / Credit: OIST/ 中島隆太博士(2022)

しかし、ツツイカのカモフラージュ能力は、飼育下で偶然発見されました。

OISTの臨海研究施設であるマリン・サイエンス・ステーションにて、研究員が水槽に生えた藻類の掃除をしていたところ、藻類のなくなった場所と、まだある場所で、ツツイカが体色を変えていることに気づいたのです。

そこでチームは、飼育下にある数匹のツツイカを水槽内に入れて、観察。

水槽の半分はきれいに掃除し、もう半分は藻類に覆われたままにしました。

すると、すべてのツツイカが、その境界線をこえる瞬間に、すばやく体色を変化させていたのです。

藻類のない場所では、淡い白色をしており、藻類のある場所に入ると、それに合わせて黒っぽく変化していました。

変色は2秒以内で完了しています。

藻類のある場所に入ると、黒っぽく変色するアオリイカ
藻類のある場所に入ると、黒っぽく変色するアオリイカ / Credit: OIST/ 中島隆太博士(2022)

この結果から、ツツイカの生存に周囲の生息環境がおおいに役立っていることが示されました。

中島氏は「ツツイカが捕食を避ける上で、生息環境が重要な役割を果たすのであれば、ツツイカの個体数の増減とサンゴ礁が健全であることの間には、私たちが想像していた以上に関連がある」と指摘します。

また、同チームのズデニェク・ライブネル(Zdenek Lajbner)氏は「この能力にこれまで誰も気づかなかったことに、いまだに驚いている。

これらの素晴らしい動物について、知らないことがいかに多いかということが分かる」と話しています。

藻類があるかないかでこれだけ変色する
藻類があるかないかでこれだけ変色する / Credit: Ryuta Nakajima et al., Scientific Reports(2022)

チームは今後、ツツイカが周囲の環境をどのように見ているかを探るべく、「視覚能力」についても調べていくとのこと。

それらの結果は、ツツイカの保護活動にも役立つと期待しています。

次ページイカって、どのように色を変えているのか?

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