「違う」という意識は強力な歪みを作る
いったいどうして少数派に対する認知は歪むのか?
その答えを研究者たちは人間の注意力が原因だと述べています。
人間の脳は、珍しく予期しないものに対して注意を向けるように作られています。
そして注意の偏りは、注意が向けられた対象に対して強調効果を与えると考えられています。
つまり、私たちが少数派の人数を実際より多く感じる背景には、人間の脳が発揮する注意力の偏向が潜んでいるからと言えるでしょう。
研究者たちはこのような注意力の偏向によって少数派が実際よりも多く見えてしまうことが「多様性の幻視」であると述べています。
興味深いのは、この注意の偏向が多数派が少数派に向けるものだけでなく、少数派の人々が自分たちに向ける注意にも起きている点にあります。
多数派の場合は「自分たちと」違う、少数派の場合は「自分たちは」違うという意識が、それぞれ根底に流れているからだと考えられます。
言われてみれば、なんでもない心理に聞こえるかもしれません。
しかし本研究のように、この奇妙な歪みが学術的・体系的に調査される機会は稀でした。
研究者たちは、このような歪みは正しい多様性の発展と正しい理解を阻害する可能性があると述べています。
研究者たちは「多様性の幻想」は誰にでも起こるものであり、完全に逃れられる人はほとんどいないと述べています。
もし効果的な多様性への取り組みを行いたいのならば、安易に少数派を視覚的に目立たせるのではなく、数値に基づいた正しい知識を広めていくべきでしょう。