少数派がたくさんいるようにみえる「多様性の幻想」を発見!
私たち人間の社会には常に多数派と少数派が存在します。
人種や国籍をはじめ、出身地、好み、性的指向など多数派と少数派の組み合わせは無数に存在します。
そのためある分野では多数派になる人が、別の分野では容易に少数派になります。
では私たちの脳は、この多数派と少数派をどのように認識しているのでしょうか?
ヘブライ大学で行われた研究では、少数派に対する私たちの認知はかなり酷く歪んでいることが示されました。
例えばアメリカを対象に「人口の何%が黒人か?」と質問を行った場合、平均して41%が黒人であるとの答えが返ってきました。
しかしアメリカにおける黒人の実際の比率は12%に過ぎません。
またイスラエルのある大学に通う学生たちに「自分たちの大学には何%のパレスチナ人がいるか?」が尋ねられたケースでは、ユダヤ人学生は平均して31.56%がパレスチナ人だと答え、パレスチナ人学生は平均して35.81%がパレスチナ人だと答えました。
どちらも3割を超えるものです。
しかし実際のパレスチナ人学生の割合は、わずか9.28%に過ぎませんでした。
これらの結果は、あるグループにおいて少数派とみなされる人数は極めて歪んだ過大評価を受けていることを示します。
しかも歪みは多数派から少数派に向けたものだけでなく、少数派の人々が自分たちに向けた認識ても起きていました。
さらに認知の歪みは画像認識にすら大きな影響を与えていることが判明します。
人口に占める割合の予測は、正確な数値を知っている人以外にとっては、いってみれば単なる予測に過ぎません。
そのため次に研究者たちは、被験者たちに対して複数の人物の顔写真が映った画像を2秒ほど見てもらい、黒人の比率を答えてもらうテストを行いました。
写真全体において黒人が占める実際の比率は25%になっています。
このテストは人口における黒人の比率を答える予測力や知識力が試されているのではなく、単に目の前の事実を答えてもらうだけです。
しかし結果はやはり歪んでいました。
白人の参加者は43.22%が黒人だと答え、黒人の参加者は43.36%が黒人だと答えました。
この結果は、少数派に対する歪んだ認知は、予測能力だけでなく目の前の事実に対しても極めて強く働くことを示しています。
そして歪みは多数派である白人だけでなく少数派である黒人でも起きていました。
いったいどうして、私たちの脳はこんなにもポンコツなのでしょうか?