「俺に触るな」仲間に触られるのも触るのも嫌なボッチマウス
優しいタッチの伝達に関連する遺伝子を破壊された変異マウスに何が起きたか?
研究者たちが変異マウスの行動を分析したところ、奇妙な変化がみられました。
通常、マウスたちは仲間から受ける毛づくろいに快楽を感じるだけでなく、自分からも仲間のマウスに対して毛づくろいの奉仕をします。
上の動画では、毛づくろいを受けている下のマウスが恍惚の表情をみせている様子が示されています。
マウスにとって毛づくろいを通した優しいタッチの「送り合い」は、社会的関係や絆を築いたり快楽によってストレスを緩和するための極めて重要な手段となっています。
しかし優しいタッチに関連する遺伝子を破壊された変異マウスたちは違いました。
仲間のマウスが毛づくろいをしてあげようとすると逃げて遠ざかっていだけでなく、仲間のマウスに対して毛づくろいを行うこともありませんでした。
どうやら優しいタッチを伝達する遺伝子たちが破壊されたことで、変異マウスは身体的接触から快楽を感じられなくなっていたようです。
人間に例えれば「ギュってしてあげる」という仲間に対して「俺に触るな」と言っている状態に近いでしょう。
「俺に触るな」と言う人間は往々にして、他人に優しいタッチを与えることもありません。
人間ではそのようなトゲトゲした人間は孤立しがちになりますが、興味深いことに、変異マウスたちにも社会的孤立化が起きていることが判明します。
変異マウスたちは多頭飼いの状況においても、1匹で常に孤立しており、仲間との絆を形成することはありませんでした。
また変異マウスたちはストレスに対する耐性も大きく低下していることも示されました。
マウスは社会的な動物であり、仲間との絆はストレスを軽減する効果があります。
しかし毛づくろいによるコミュニケーションがとれない変異マウスはそのような絆が形成できず、ストレスに対して脆弱になっていたのです。
つまりボッチマウスかつメンヘラマウスになってしまったということです。
しかし、神経ペプチド「PROK2」を介した伝達システムは、本当に優しいタッチだけを専門的に取り扱っているのでしょうか?
痛さや痒さを伝達するついでに、優しいタッチを伝達しているということはないのでしょうか?