優しい「ギュ」専門の伝達システムが存在する
新たに発見された神経ペプチド「PROK2」を用いた神経回路は、本当に優しいタッチだけを運ぶロマンチックなシステムなのか?
謎を確かめるために研究者たちは通常のマウスと変異マウスの両方に対して痒みなど他の皮膚刺激を行い、触覚信号の伝達過程を追跡しました。
結果、優しいタッチは痒みなどの他の感覚の伝達回路とは別に、脳に送られていることが判明します。
つまり優しいタッチは痒みや冷たさと同じく独立した感覚カテゴリーだったのです。
研究者たちは「かゆみ特有の細胞と神経ペプチドがあるのと同じく、優しいタッチ特有のニューロンと信号を伝達するための神経ペプチドがあることが判明した」と結論しています。
専門の神経回路を持つということは、優しいタッチが生物学的にも極めて重要な存在であることを示します。
ただ人間でもマウスでも、優しいタッチならば常に気持ちよくなるわけではありません。
知らない相手や嫌いな相手にいきなりスリスリされても、人間もマウスでも気持ち良さよりも嫌悪感が先行してしまうからです。
このような相手による違いは、痒さや冷たさには存在しません。
蚊や水虫のように生物が違っても痒さは伝わりますし、氷水でもキンキンに冷えたビールでも冷たさそのものは同じように感じます。
なのにどうして優しいタッチだけは、相手を強く「えり好み」するのでしょうか?