海底ドームで野菜や果物を育てる「ネモズガーデン」
イタリア・ノーリ付近の海底には、6つの透明なドームが沈められており、その中では数々の植物が栽培されています。
これは「ネモズガーデン」と呼ばれる世界で唯一の「水中温室」プロジェクトです。
食物生産の新しい可能性を見いだすため、海中での温室栽培にチャレンジしているのです。
では、どのように水中温室を成立させているのでしょうか?
まず各ドーム内には約2万リットルの空気が保持されています。
そして写真から分かる通り、海底にも太陽光が届いています。
太陽光が植物に光を供給し、ドーム内を温めてくれるのです。
太陽光が届きにくい場合でも、設置されたLEDによって光を供給できます。
また地上とは異なり、海水の温度は昼と夜で大きく変化しません。
水中という環境が、ほぼ一定で温かい「理想的な温室」を作り出しているのです。
ちなみに、ドーム内では水耕栽培が採用されています。
これは土を使わず水と液体肥料で植物を育てる方法であり、近年の植物工場では主流になっています。
しかもドームの内壁には結露が生じるため、これを利用して植物に必要な水を供給し続けることが可能。
このプロジェクト自体は2012年から始まっていますが、現在までに、トマト、グリーンピース、イチゴ、キノコ、サラダ菜、ハーブ類など100種類以上の作物を育てるのに成功しています。
とはいえ多くの人は、この水中温室にどんなメリットがあるのか疑問を抱くことでしょう。
実際、コストや効率面だけを見ると、従来どおり地上での栽培や植物工場の方がはるかに効果的です。
しかし「植物栽培できる新しい場所を見いだす」という観点で見ると、水中温室が唯一無二であり、将来の可能性を秘めていると分かります。
現在でも環境条件が整っておらず、植物の栽培が困難な国は存在します。
例えばモルディブはアジアのインド洋にある島国ですが、新鮮な農作物のほぼ100%を空輸に頼っています。
こうした国が水中温室によって、いくらかでも国産品を生産することには大きな意味があります。
また将来起こるかもしれない劇的な環境変化に備えて、水中温室の道を探っておくことには長期なメリットがあると言えるでしょう。